拝啓 コピー機様 おおたにあかり
いつか付着した汚れが
部品をサビさせていた
いつの間にか
いつの間にかだ
確かにそこに居て
微々たるものだったはずの
その汚れは
粛々と熟熟と育ち
鉄をもサビさせていた
「ごめんね
気が付かずにいて」
機械と知りながら謝っている
週5回ほど向き合っているくせに
おざなりでしかない
危機管理を詫びる
寂しかったかい
サビてしまって
なんて冗談みたいに
問いかけしながら
今更、布切れで
力いっぱい擦ったりしてみる
小さな小さな汚れだったはず
そう日々の積み重ね
これは罪重ね
もう取り返しようがない
週5日わたしと共に
働いてる君は
現在価格中古で4万4千円
もう製造中止になっているらしい
まだ壊れていないのが救い
不機嫌な音で動きはじめる
あなたはプリント機
日々繰り返し応えてくれる
わたしたちは支え合っている
なのに 見て見ぬふりどころか
気づくどころか
こうなるまで知らなかったんだ
力の入り過ぎた手緩めて
撫でるようにふいてみる
まだ完全には壊れていないはずの
いつも応えてくれる君
明日もこれからも
私と働いてくれるよう
願いと祈りをこめながら
身勝手な人間だとは重々承知で
「もっとキチンと掃除するよ」
って小指でボタンそっと押す