その日見たのは まるまる
あー 行きたくない
包丁動かす手を止めて
口の中でつぶやいた
洗濯掃除 続けて出勤
毎日同じ 繰り返し
さしたる理由のある訳じゃないが
できることなら遊んでいたい
味噌汁の野菜を切りながら
そんなことを考えた
目は離さないよう気をつけながら
俎板の上の野菜と一緒に
野菜をおさえる手も見えていた
そう言えば
働くことが空しくて
「ぢっと手を見る」詩があった
きっと少しうつ向いて
力なく指の曲がった両手の平を
じっと 見ていたんだろうな
毎日同じ 繰り返し
私もこの手で働いている
手を見る理由は違うけど
真似してそっと 目をやってみた
目に入ったのは手の甲だった
空しい気持ちでこの手を見るのに
わざわざ表裏 返す気にはならない
あるがままの
手の甲だった
焦点は手の平としていたけれど
この時見たのは
甲だった
その日
啄木がぢっと見たのも
あるがままの手の甲
だったろうな