白菜の甘酢漬け 朝霧綾め
白菜の甘酢漬けを食べていると
自然と澄んだ気持ちになる
汚れのない
白菜の白
食欲をそそるごま油に
酢と唐辛子の香りが
ひんやりと冷たく
鼻孔をつきぬける
箸をとって食べる
作り慣れ 食べ慣れたこの味
一口かむたび
りんごに似た
しゃくしゃくという いい音がする
白菜の甘酢漬けを 食べていると
世界までが
澄んでいくような気がする
災害や
戦争や
ねたみや
にくしみが
まずは塩でよくもまれて
そのあと酢と唐辛子で
味付けされる
おいしくなったなら
私が食べてしまう
そうして世界の
不幸な出来事が
一皿分だけ たいらげられる
食べ終わって
ほんの少しきれいになった世界でも
また私は白菜の甘酢漬けを作っている