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スレッドNo.1421

1月10日から1月12日までのご投稿分の感想と評です。 夏生

お待たせいたしました。
2023年1月10日から1月12日までのご投稿分の感想と評です。


「マーマレードを作りましょう」 紫陽花さん

紫陽花さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「マーマレードを作りましょう」の評を送らせていただきます。

みかんを煮て、マーマレードを作る。その行為がなんともあたたかく
「おかあさんもそのまたおかあさんも大好きだった味を作りましょ」
と、心の中、あるいは声に出して歌っているところがいいですね!
受け継がれる味というのは、心の回復のためにあるような気がして。
特に何かあったわけではなくても、その料理を作ること、味わうことによって
癒えていく、救われる心があるのではないかと。
三連目から四連目の作る過程は煮られるみかんの香りと温度、作る手の動き、表情まで
目に見えるようで、誰かのために(自分のためでも)心を込めて作る様子はまさに詩的だなと思いました。
心があたたかく、軽やかに楽しくなれる一篇でした。
御作、佳作とさせていだだきます。



「さよなら さよなら かこの わたし」 森川 遼さん

森川 遼さん、初めまして!ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「さよなら さよなら かこの わたし」の感想を送らせていただきます。
すべてひらがなで書かれた作品は、少し読みにくい場合がありますが、森川さんの作品は読みやすく、すっと言葉が入ってきました。かこのわたしへ別れを告げていますが、その時、その時に動いた心を、感じたことをそのまま丁寧に掬いあげて、愛でながら手をふる「わたし」を見届けています。
捨てる、忘れるとは違った健気な「別れ」がこの詩の中にありました。
「みんな すきです かこの わたし」と自分を嫌いにならないで、かこのわたしを自分のこどものように思っているようなあたたかさを感じました。
さよならの中に感謝と労いがこめられた、あたたかい一篇でした。



「休日の午後の昼下がり」 ネガテブさん

ネガテブさん、初めまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「休日の午後の昼下がり」の感想を送らせていただきます。

主人公が時間を持て余しながら、過去に思いを馳せます。少し寂しい気持ちになった後、
「あの人」の顔が浮かびます。そこから少しずつ主人公の気持ちが前向きに元気になっていく様子は読んでいるこちらも、相手も同じような気持ちであったらいいな、再会できるといいな、と思って、懐かしい心の動きがありました。
最後に初めより幾分、心が明るくなった流れはよかったです。
誰かを思う、忘れない気持ちが日々を明るくすることを思い出させてくれた一篇でした。



「立ち眩みの朝」 秋冬さん

秋冬さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「立ち眩みの朝」の評を送らせていただきます。

更年期というと女性がかかりやすいという印象が強いですが、男性にも更年期は
もちろんあって。この詩の主人公のようなめまい、立ち眩みもあるそうです。
精神的にも怒りっぽくなったり、不眠になってしまったり。
成長期のように身体が大きく変化する時期で。生活に支障が出るほど重い症状の人もいます。性別だけでなく個人差もあるので、理解されないところもあるかもしれません。
私もプレ更年期にさしかかっているので、「ああ、わかるなぁ…つらいんだよなぁ」と頷きながら読み進めました。苦しみをわかってもらえないというのは、本当につらいです。大袈裟に騒いでる、考えすぎだ、心配し過ぎ、気にし過ぎ、と言われてしまうと「もういいよ」と自暴自棄な気持ちになることも。
結局、自分を助けるのは自分なのですが。と、御作を我が事と感じて自分だけではないんだ、と、どうか少しでも良くなりますようにと願わずにはいられなくなりました。
御作佳作とさせていただきます。



「崩れた世界の音がする」猫目屋倫理さん

猫目屋倫理さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「崩れた世界の音がする」の評を送らせていただきます。

きな臭いことが大きく報道されるようになって。恐ろしい世界が、時代がやってくるのではないか、という不安が広がっています。
その不穏、絶望感をひとつの音楽として描いています。歌え、と強要されているようにも
自分自身に強いているようにも見えて、心の崩壊が起こっているようにも見える。
主人公に恐れはなく、繰り返される再生と破壊をただ見つめる目だけがあって。
思考も心も停止してしまった主人公の声が静かに鋭く響く一篇でした。
御作佳作とさせていただきます。



「悪い恋人」 紅桃有栖さん

紅桃有栖さん、はじめまして!ご投稿くださりありがとうございます!
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「悪い恋人」の感想を送らせていただきます。

お互いの心情を語る形は劇的でふっと惹きこまれました。
エロいという言葉が下世話ではなく、彼の素直な気持ちの吐露のようで
よかったです。言葉の選び方、配置の仕方が上手な方だなと思いました。
「悪い恋人」はどちらなのか。気持ちの温度は幾分、彼の方が高いように感じました。
今より過去、未来の想像をしてしまう。現実逃避なのか、今を「想像」するということは
言葉や思考で安易に記録しないためか。二人の言葉からにじみ出るさみしさを感じました。
着地点がまだ先にあるような不安定さが、不思議な魅力となって心に残った一篇でした。



「水」 山雀詩人さん

山雀詩人さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「水」の評を送らせていただきます。

ぽたぽた、で、水の存在が、水漏れの状態がわかります。
水漏れは困りごとのはずが、詩の主人公は「水はずごい」と感嘆の声をあげます。
ここからぐっと読み手を引っ張っていきます。力強いです。
水の壮大な行方に思いを馳せ、水もひとつの生命であると感じる。
水から生命が誕生した軌跡が頭に浮かびます。想像していくうちに水はもとの
場所に戻り、窓のすきまから漏れます。
瞼と瞼のすきまから漏った水はぽたぽた、ではなく、ぽろ ぽろ ぽろで。
主人公の心の中であふれたものがこみ上がったような、切なさがやさしく響きました。
御作佳作とさせていただきます。



「寄る辺ない寄る辺には音しない音を」 maut joeさん


maut joeさん、初めまして!
(お名前の読み方は「マウトジョー」さんでよろしいでしょうか?)
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「寄る辺ない寄る辺には音しない音を」の感想を送らせていただきます。

「音しないから音しない 音しないなら音しない」と不思議な言葉の繰り返しから
はじまって、リズムよく言葉が展開されます。音しない、が、お歳しないになって
お歳しないから脅しないになる、この流れ、面白いですね。なんだろう、なんだろうと
ワクワクしながら展開を追う楽しさもあります。どこに行きつくのか、次の言葉は何か。
最後に「脅しないなら脅しない」と、これは取引きだった!?と驚きました。
面白くて、ちょっとだけこわい。面白いこわさが良いです。
リズムとテンポが魅力的な一篇でした。



「向かう場所」大杉司さん

大杉司さん、初めまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
僭越ながら御作「向かう場所」の感想を送らせていただきます。

ギターを背負った若者の視点から街の風景や人々の動きが描かれていて。
よく見る風景、よくある光景、それでも惹きつけられるのはなぜか。
主人公は孤独を抱えながら、サラリーマン、学生、と、ひとつのカテゴリーに属する人を
目で追います。ギターを背負っているのは自分だけ、というのは「不安定な自分」と
いっているようで、それを卑下しているわけではないけれど、どこか気にしている。
心情が語られない分、読み手に言葉の端や雰囲気から想像させます。

皆同じ時間に乗り
同じ時間に帰る
僕は奇遇と思った

ここ、面白いですね。同じことが繰り返されることを、奇遇と思うのはなぜか。
当たり前のように同じことを繰りかえすことが出来る人が、主人公の周囲にいないか、
主人公が成せなかったことか。羨望ではなくひとつの流れとして見ている。
最終連で今日は遅くまで街にいすぎた、とあります。ここにサラリーマンや学生に向けた眼差しの意味がこめられているように感じました。感情のうねりが静かにたしかにあったのだと。
読み方が違っていたらすみません。
主人公の心の中をいろいろ想像することが出来る一篇でした。

編集・削除(編集済: 2023年01月22日 14:58)

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