MENU
709,858

スレッドNo.1424

城の風景

微細な馬が通り過ぎた
薄墨色の影をまとって
敵が来るわけでもない
味方は二人だけ
男は
城の警備につく
雪の日には
美しい女を追い回し
つまずいて
白にまみれて微笑み
雨の日には
死んじまった兵士たちの
旗のように揺れている
葬列をみまもる

退屈な月曜日
大きな欠伸をしていたら
男は
巨大なガマガエルになっちまった
絶望するどころか
陽気な労働者の唄を
があがあ
口ずさみ
ついには
銃なんかほったらかして
城下町の連中と
真夜中のジャズを
演奏したりする
ブルブル震えるトランペット
グルグル回る
カエルの目玉
夜を走るドラムの雄叫び

警備はそっちのけ
ある日の午後
いつのまにか
荘厳な城は消えてしまった
夢から覚めたように
そうして
ペンキ塗り立てみたいな
ガマガエルの体は
醤油で煮詰めた
岩波文庫みたいな色に
なっちまって
すっかり美味そうになった
ついには
酒に酔った
通りすがりの
そこいらの猫に
ガブッ、と頭から
食われちまったのさ
猫は満足
尻をふって帰宅する
春の雨のなかの出来事
薄墨色の空の下
蒲公英だけが
凝視していた

編集・削除(未編集)

ロケットBBS

Page Top