1月24日(火)~ 1月26日(木) ご投稿分、評と感想です (青島江里)
◎1月24日(火)~ 1月26日(木) ご投稿分、評と感想です。
☆濁った感情 大杉 司さん
雨が降っている風景を見ながら、思うことを丁寧に綴られていますね。
一連目。特になんていうことのない空です。「ざーざー」という言葉が表現してくれています。濁った空の色、一日雨というTVの天気予報。もやもやとした気持ちが湧いてくる感じが伝わってきます。カーテンを閉めてからの場面転換。ヒーターの温度。皮膚の温度感から心もともに温められる感じ。こちらがこの作品の中で一番のみせどころになっていると思いました。
ヒーターの温み→温められる皮膚の温み→温まることによる心の解放→このままでいたい→あたたかいっていいな→さっきまでのもやもやした気持ちが消えていく→あたたかい人でいたい
じわじわと、環境によって変わっていく心の様子が丁寧に描けていると思いました。
さて、この作品で個人的に気になったところを。
二連目の「との事だった」→省略しても意味は伝わりそうですね。
八連目の「実に癒される」→癒されたということをどんな気持ちになったかということを想像しながら別の言葉で言いかえると、もっとよくなると思いました。
九連目の「暖かい感情が芽生えた」も同じく、どういった気持ちが暖かいのかを、何かを例えてもいいので言いかえると、もっとよくなると思いました。
静かな心の動きを丁寧に描いている作品。今回は佳作一歩手前を。
☆藁人形虐待防止法 紫陽花さん
え?!こんな法律いつのまにできたの?!と、思ってしまいました。架空の法律ですよね。
こんな風に驚いて作品を目にする読み手も少なくないと思いました。
ですが、藁人形セットがネットで売られているのは本当のようですね。いろんなものが売れているのですね。年始には2022年の空気が、ビニール袋に入れて売られているという情報を目にして驚いたばかりですから。
作中の藁人形をつくる「私」を取り囲み、話しかけてくる藁人形。法律の詳細が並べられていますね。本来ならば説明的なものが多いので修正と言ってしまいそうですが、この作品に限っては、全体的な流れからみると、実はこの部分が詩の一番の要素になっている部分であるように伝わってきました。書き手の方が言いたいことを代弁してくれている連になっていると思いました。
ひとつ、藁人形だって人形だ!
ふたつ、人形はみんな可愛がられている。藁人形にもその権利はあるぞ!
みっつ、藁人形は呪いだけの人形だけではないぞ!守りの要素だってあるぞ!
この三点とあとひとつ。逆に法律でなんでもかんでも固めてしまうのは、ベストなのか?という逆の立場からの意見に続くもの。
どうすれば一番いいのかなんて私にはわかりませんが、言えるのは安全、安心な暮らしをおくりたいなということ。藁人形がだめなら別のもっと危険な方法で実践するなんてことになってもいやだなと。物騒なことはいやだなと。頭の中に色々なことが旋回しました。
差別や平等に関することに更に話が繋げると、また深いものになっていくのかなとも。
突飛なテーマ、始まり方ではありますが、差し込み方が独特で、読み手に考えさせてくれる面もある作品だと思いました。佳作を。
☆わたしはゆめをみる 森山 遼さん
タイトルの通り、夢のような言葉の流れを感じました。「ゆめをみる」ということですから、現実にどうこうというよりは、「願い」「望み」に近い位置にあるものをさしているように感じました。
全体的に「だろう」がたくさん使われています。通常であれば多く使いすぎているので整理してみてくださいといってしまいそうなところですが、この作品に関しては「だろう」を多く使うことで、未知の春から吹いてくる風のイメージが沸いてきて、よい特徴になっているように思いました。音的にも「blow」に近いものがありまして。個人的な感覚になりはしますが。
一連目の①「しあわせのかたちをみつけたら/はるになるだろう」と②「かなしいあきは~」ですが、この間は改行された方がいいかもしれないです。最初の方は、メインの要素を表現していて、②からは具体例に入っているものだからです。
二連目できになったのは「せんか」という言葉です。一行目で人間の労働、忍耐力を感じさせる表現、いわゆる日常の暮らしを感じさせてくれる行に思えたのですが、二連目に急に「戦火」或いは「戦禍」の言葉が用いられています。ひらがなで書かれていて、一見、やわらかに見えますが、非常に重い言葉です。前の行の「みんな」という言葉ひとつで場面転換をはかるのは、ちょっと難しいように思えました。最小限、「せんかのこどもたちも」にすることが必要かなと個人的には思いました。また戦火という言葉ですが、「あらそいにまきこまれた」などでぼやけさせたりすることも可能かと思いました。
三連目の「えいえん」についてですが、次の涙がぬぐわれるまでとなると「えいえん」の言い回しにブレが生まれてきそうです。こちらの表現、「願い」という意味で、一気に「えいえん」推しをして「えいえんにつづくだろう/えいえんにえいえんに/えいえんに」とこれくらいしつこく言っても大丈夫かと思いました。
一連目の
ゆきがふるだろう
さむいだろう
それでもひとははたらくだろう
そしてあたたかくなるだろう
はるになるだろう
こちらの表現、寒さから暖かくなる人の温みと、季節が流れていく様子が重ねられていますね。寒くても人は働くというところは、人の忍耐力を感じさせてくれると同時に、懸命に働いている時の白い息さえ感じさせてくれました。とてもとてもよい表現だと思いました。
春は私たちの希望である・・・・・・そのように感じさせてくれる素敵な作品。今回は佳作半歩手前で。
☆渦 ピンボケに気づいた大人さん
好奇心の旺盛なことはよいことだと思います。ですが、時にはしゃぎすぎたり、夢中になりすぎた時、子供のように思われてしますってことは、たしかにありますね。
それが好意を抱いている相手の前であったら。そういうことを指摘されたり、そうでなくても、そのように思われたのではないかと不安になることは自然な思いだと思います。
現時点で片思いであろうと、両想いであろうと、人と人の位置が少しずつずれていってしまうことは、とっても痛いことだと思います。
切ない思いをしている時は、ささいなことにでも反応しやすく、気づきやすかったりすると思います。作者さんは、飲み物に入れる渦にそのような気持ちを抱いたのだと、作品が伝えてくれたように思います。
一匙のミルクを入れた
白黒の渦は消えている
透き通るような緑の器を
そっと手に取る
少しずつ終わっていく様子を表現されたこの連、とても繊細な表現になっていると思います。敏感な心の器を表現された作品になっていると思いました。
☆好き<嫌い 秋冬さん
おそらく、名前を伏せても誰の作品かわかるような気がします。見た感じや、とつとつと語る感じ。何度もいろんな投稿作品に触れていると、まるで日めくりカレンダーをめくっているような気持ちにもなります。どこにでもいる、誰にでもありそうな気持ちを表現されていますね。
好き体質から嫌い体質になった。テーマはここですが、ここで終わらずに父のことに足をのばしたこと。ここで親子の感情について触れて展開していくところがこの詩の色付けになっていると感じました。この部分がなければ、ただ、年齢を重ねて人嫌いになったのかなっていう愚痴のようなテーマで終わってしまっていると思います。
本当に
しばらくしたら
嫌いも
枯れるのだろうか
父に似てきて嫌だときた流れでの最終連。「枯れるのだろうか」の疑問の表現に込められた意味。それを自分なりに想像すると面白いと思いました。私は、嫌いが枯れていく方を思いました。これは単に嫌い体質になったのではないということ。この嫌い体質は、親子にかかわることで特別なものであるというようなものを醸し出しているようにもとれそうです。単調な言葉の中に、無意識に含まれたかのような人の気持ちを感じさせてくれる作品。佳作を。
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大寒波がきました。悪天候で大変な思いをされている方々が、一日も早く安心して過ごすことができるようになりますように。私は雪の少ない地方に住んでいますが、それでも今回の雪で鉄道のダイヤも、ここ何年も聞いたことのない大幅な乱れ。当日、徹夜で復旧につとめてくださった鉄道関係者のみなさまには、ただただ感謝でした。
みなさま、寒い中、今日も一日おつかれさまでした。