凧揚げ
お正月の真新しい空に
凧をあげる子供たち
遠い空を泳ぐ凧を眺めながら
たとえば心のようだとおもう
遠い未来や過去を思うほど
遠くの人を思うほど
ピンと張る糸
消えそうな雲を求め
凧はずっと張り詰めたまま
気まぐれな風に怯えている
地上と引き合いながら
安定しているように見えても
それは永遠じゃないから
足元の石ころにバランスを崩し
糸が複雑に絡まってしまう
その前に
心を手繰り寄せよう
そうして
風に鼓動する凧を掴むように
冷えた鎖骨に手を当てて
確かな日常を思い出そう
リビングにある
林檎の清々しい匂い
縁側で爪を切るときの潔い音
両手を温めながら飲む苦いコーヒー
そういうものたちが
ささやかに
わたしに寄り添い
わたしを形作っているのだから
この手が届くものたちを
愛おしむことさえできればと
無邪気に凧をあげながら
走りくるあなたを
ふわりと
風ごと抱きとめる