園 妻咲邦香
新しい国が作られた
それは針の先ほどの遠い渚にあって
土地には音楽しかなかった
もう一つ違うものが欲しいよねって
私たちは話し合ったんだ
飛べない道を空と名付け
潜れない道を海と呼んで
混ざらないよう置き場所を決めた
だから私たちは出会えたんだ
すぐに消えてしまう歌のように
紡いで、繋いで
違うものらが来るのを待つ
そうして幾日も幾日も
私たちは話し合ったんだ
大地も一緒にね
茨や蟹や猪たちも仲間に入れて
何もない真っ直ぐなただの線が
緩やかに波打ち、動き出すのを待って
私たちはそれぞれ花を手に持つ
咲いているものはまだいい
まだ開き切らないで泣いているのもいる
それでも来てしまう朝に
砂と波と太陽しかない場所に
裸足で立って
潮が満ちたら舟を漕ぎ出す
引いたなら歩いて渡れる
非力な国は遠い渚で
歌を愛で、歌で歓迎の合図を送る
彼らをこの国に迎え入れるために