MENU
975,927

スレッドNo.1523

サラリー  理蝶

電線の上止まるカラス
聡い目で何を見る
電車はまた止まるからすぐ
羽ばたいて消えてった
きついネクタイの結び目に
今日一日が詰まっていて
緩いビールの泡立ちが
今日一日を労う為に待っている

生活は交叉する
繰り出す若い女や消えそうなワークマン
皆どこかで見た顔だ
でも何も知らない
僕も誰かにとっての誰かだ

縁もゆかりも名前もない
いち人間として皆揺られている
それでもきっと乗り合わせただけの僕たちも
無数のベン図を描くことができる

僕達はぼけていた目の焦点を
すぐに合わせて駅へ降りてゆく
人のさざなみとなって
機械的な明滅と共に改札を抜けたなら
とぼとぼと歩き出す
各々の寝床へ
各々の明日へ

やがて一様に僕達は目を瞑り
ほろ苦くほの甘く
生きていた事を思い出す
生き延びたことを確かめる
やがて眠りが訪れる

そして朝のブルーを穏やかに照らす
大きな太陽と共に
山の手はまた回り始め

腹を下した僕は
駅のトイレへ駆け込み
トイレットペーパーがまた回り
そしてそれを切らし

掃除に来た清掃員が
また替えを仕入れねばと
頭を掻く
そうして経済が回る

偉大な愛すべき
時々滑稽にも思える
この世界は回っている

僕が今立っているこの大地だって
黒く深い宇宙の中で
孤独に回転を続けている

それぞれの縮尺で
皆なんらかの歯車となって回転している

時々、飽き飽きする日もある
ふとこの回転の連続から
降りたくなる日も

でもいつか出会う
僕達を幸せにする歯車と噛み合う日が来る
僕は穏やかな太陽に向かい祈る
その日が来ることを

さあ、また始めよう
くだらなくて何もない
思い返してやっと愛しくなる
そんな一日を

編集・削除(未編集)

ロケットBBS

Page Top