美しい世界に生きている 江里川 丘砥
美しい世界に生きている
それは春に桜が咲く
夏を蝉がしらせる
紅葉ゆれる秋はつかの間
一夜で白銀へと変わる
冬がくる
美しい世界に生きている
静かに流れゆく星と
ぐうぜんに夜空を見上げるわたし
その巡り合せはまたとない
遠くで生まれた人と
なぜか出会い親しくなる
積み重ねた過去や目指す未来が連れてきたと
思い当たるのは先のこと
美しい世界に生きている
朝見た桜が夕方には散る
水面にうつる空
夜光虫でひかる海
丘一面に咲く花を
ゆするように風が吹き
どこかで鳥の羽ばたく音がする
満月に照らされたわたしの影に手を振り
青い夜空を見上げている
美しい世界に生きている
別れに泣いては
出会いに驚き
積み重ねた時間に笑うような
この一瞬のために生きてきたのかと
あなたに会うために生まれてきたのかと
思わせるような
美しい世界に生きている