アメリア 三浦志郎 2/10
アメリカのアメリア・イヤハート
偉大な飛行家チャールズ・リンドバーグの女性版
“レディ・リンディ―”と呼ばれた
女性初の大西洋単独横断飛行
ハワイ~(本国)オークランド単独飛行
そして世界一周飛行
その途上 南太平洋で消息を絶つ
空のエピソード
不可解なものも少なくない
時代の寵児だった.
彼女の多くのことが報らされる中で
死だけが抜け落ちたように
不明
愛機の尾翼に
謎を曳航し
幻の彼女は今も天翔ける
最後の交信
「現在157°―337°線上にいます」
「6210キロサイクルでメッセージを繰り返します」
「聞き続けてください」
「疑問を感じる」
「南北線上を飛行中」
最後の肉声
生から死へ
空から海へ
今も南太平洋の何処かで
遺骨が海底で訴えているのか
「メッセージを繰り返します 聞き続けてください」―と
何処で命を落とした?
仮説だけは多くある
どれも確定はできない
一個人の記録飛行は困難なものだ
理想と現実の狭間
その志とその資金
AND ALL THAT (など など)
単に飛ぶだけではない
彼女なりの折り合いの付け方
アメリアの飛行パトロンとして、裕福な彼女の夫君、ロッキード社、
パンアメリカン航空(パンナム)。それらを経由して当時のアメリカ
政府・権力・軍部が関わったことは確実だ。飛行達成支援と引き換え
に、国に必要な情報を収集することを政府は強く希望したに違いない。
あるいは強要した、と考えられる。彼女の飛行機には、より高い性能
・充実した装備が与えられた。陸軍航空部隊内で、司令官の前で宣誓
しているアメリアの写真が存在する。又、ルーズベルト大統領は中央
太平洋に出先機関を設けるよう指示し、海軍には彼女の飛行に極力
“協力”するよう命じている。
アメリアの飛んだ島々は
一九三七年 七月上旬 四年後には太平洋戦争
日米の領土的緊張が生まれつつあった
飛行コースと両国の版図は
奇妙にも隣接する 符合する
民間にして軍事的偵察飛行だったのか
翼に国家をも背負わされたのか
消息を絶った海域を
綿密かつ広範囲に捜索が行われた
日本も参加・協力している
が
ここに奇怪な噂がある
日本軍がアメリアを捕捉又は撃墜
スパイとして拘束中
彼女は病死したか 処刑されたか
まことしやかに伝わっていった
果ては
*東京ローズの一員にさせられた とも
しかし 飛躍が過ぎるだろう
さらに不思議な出来事、続く。アメリアが消息を絶った二か月後に
撮ったとされる写真が現れた。サイパン島のある原住民が撮ったと
主張している。以前の写真の彼女は多くが微笑で映っているが、そ
の写真に限っては、老けて見え、思いつめた表情が窺える。意気消
沈しているようにも見える。もちろん微笑はない。写真提供者の名
前は公表されていない。サイパン島は彼女の飛行ルートからすると
不自然だ。しかし、その写真が本当にサイパンでのものならば、
アメリアの日本軍拉致説が、俄かに浮上しそうである。彼女は、
(日本の領海の)何処かで捕らわれ、サイパン島に移送されたこと
は考えられる。何故ならば、当時、同島は日本の重要な委任統治領
だからである。そもそも大規模な捜索にもかかわらず、ライフジャ
ケットひとつ見つからないのも不自然だ。“何者かが漂流物や残骸を
回収して処分”し、証拠隠滅を図ったとは考えられないだろうか?
もしもこれらが事実であるならば、日本側の捜索協力は結果的に全
くの“演技”ということになりかねない。他にも情報・証言は数多い
が、かえって謎は深まるばかりだ。ただ、日本軍関与説がなお根強
いのは事実である。しかし、それを裏付けるような日本側の資料は
全く出て来ていない。この事件について、今もアメリカ政府が極秘
文書としているものがあるらしい。誰かが、何かが真相に枷をかけ
ている気配がある。いつかは真実が全て明かされるのか、不明のま
まで時は過ぎるのか。彼女は何処で、どんな風に生を終えたのだろ
うか。
(アメリア この写真は紛れもなくあなただ
(けれど あの微笑は何処へ行った
(私の国の人々に囚われたのか?
わからないことが多すぎる
唯一 わかっていることは
飛ぶことのアメリアの純粋
しかし 何者かが 何事かが
彼女に圧力を加え
志を変えさせたのか
権力かもしれない 時代かもしれない
愛機「ロッキード・エレクトラ」は離陸と共に
その純粋を地上に置き去りにしたか
戦争の足音が近づいていた
そんな時代に向け
彼女は飛び立って行ったのか
空のエピソード
不可解なものも少なくない
これは過去の飛行記録にして
冒険譚である
英雄譚である
と同時に―
生と死
名声と憶測
アメリアは今も
幸福と不幸の
国境線を飛んでいる
残されたミステリー
アメリアは今も
人々の
心の何処かを飛んでいる
*東京ローズ……太平洋戦争中に日本が行った連合軍向けプロパガンダ放送。兵士達の心情に訴え厭戦気分を煽ろうとした。
英語に堪能な日本女性・日系アメリカ人女性・外国人捕虜をアナウンサーにした。
*参考文献……「アメリア・イヤハート最後の飛行―世界一周に隠されたスパイ計画」ランドール・ブリンク 新潮文庫
平成七年七月一日 発行。 その他 ネットメディア。
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事実を土台としつつ、私の推測も若干入っている点、ご了承ください。