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スレッドNo.1589

空中都市の人  鯖詰缶太郎

今年一番の猛暑に耐えかね
入道雲が
暴力的な眩しさで
やかましくなった
蒼穹に
そびえたつ

入道雲は
そのまま
万年、孤独を
抱える
宇宙に
突き刺さるでもなく
ふてぶてしい
巨大な下半身を
地平線に
鎮座させ
威嚇する
鳥類のように
その白い身体を
間延びさせている

あなたは
ゲームボーイのAボタンと
十字キーを
駆使して
火を吐きながら
ハンマーを投げてくる
卑怯な魔王と戦っている

ゲームオーバー

背中に生えている羽が
しょんぼりとしている

難しくね?

あなたは
文無しになった
予想屋のように
僕に笑いかける

空を飛ぶ方が難しいでしょ?

そうでもねえよ
たまたま、あんたに羽がついてなくて
俺にはついてるってだけの話だろ

あなたは
煙草に火をつける

僕は
瓶ビールをあける

蜃気楼だらけの
鈍くなった空気の中、
解放された麦芽が
アルコールを振りまきながら
汗が一筋流れている僕らの
喉を鳴らす

ひとくち、ちょうだいよ

空の飛び方を教えてくれるならいいよ

あなたはくちびる、とがらせて

飛べたからっていいことねえよ
と、煙草の煙を吐き出した

僕はビールをひとくち、飲み
口にふくませて
喉にとおし、
気分を少しだけ、満たすと
羽を生やした友人に
まだ冷たい瓶ビールを渡した

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