村の娘 朝霧綾め
生まれ変わったら
ただ平凡な村の娘になろう
春と秋には祭りがある
ヨーロッパの小さな村の
健康ではつらつとした娘になろう
たいして美人でなくたっていい
それでもあふれるばかりの平和が
村全体を覆って
彼女もつつましい幸せを
存分に堪能しているに違いない
じゃがいも畑に暖炉の火
たとえその日常が
退屈という言葉で呼ばれようとも
一瞬一瞬に
平凡という美しさが込められている
畑仕事をしながら歌声が響く
野菜を背負って市場から帰る
結婚式の朝の青空
ようやく収穫を終えた日の夕焼け
私は村の娘になって
やがて子を生み
年をとり
やさしいおばあちゃんになって
静かに息を引き取る
そうして命を終え
無学な私はそのときはじめて
空の上には
天国というものがあったのだと知って驚くだろう
天国でしばらくのんびりしたあと
さらに生まれ変わるなら
もう一度
村の娘になろう
今度は南アメリカの 山岳地帯がいいかな
アルパカの毛を刈ってみたい