抜け殻 妻咲邦香
うっかり足を抜いた
もう戻せない
この街はまだ元気
悪口だって言っちゃう
後で笑って誤魔化すつもりだった
うっかり両手も抜いた
鏡より先に知ってしまった
本当の姿
自由は醜い
自由は冷たい
頼りないし、ひたすら痛い
後悔する
きっと
後悔しなければいけない
私は
そして
伝えなければいけない
私の悲しさを
感じたままを
後の者たちに
生まれたままの姿を
とうとう翅も抜いた
許されない世界に足を踏み入れた
安らかに眠ることも
抗うことさえも
振り返って見る今の私の表情が
もう真っ直ぐ見ることが出来ない
とっても寂しい目をしてたから
それは惜別でもなく
激励でもなく
おそらく生涯
私はそこから離れられない
その残像から
離れられないのだろうと
だから
伝えなければいけない
生きるために
何をすべきかを
何をすべきだったのかを
抜け殻が形を失って
新しい皮膚が乾いたら
すぐにも行かなくてはならない
探しに
出掛けなくてはならない
ジュースの自販機の前で
何を買うか迷ってるその人と一緒に
目指すはもう
空しかないのだから
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MY DEAR様、お誕生日だそうで、おめでとうございます。
私の息子でもおかしくないほどの年齢でありながら、詩では遥かに大先輩です。これからもいろいろと勉強させてください。