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スレッドNo.1670

臨終  江里川 丘砥

さようならまでの間に
あなたは
どこを見つめていたのでしょう
虚ろな目で
意識があるのかもわからない表情で
窓の外
暮れゆく日と人生を見つめ
あるいはもう
見つめることすらもしないで
すぐそばまで来ている死へ
すべてを明け渡す用意をするように
浅く短い呼吸を
繰り返していた

干潮の時刻が訪れ
今日の潮の満ち引きなど
もはや知るはずのないあなたが
途端にあえぎながら
大きく息をしはじめる
心電図が
慌ただしく音を立て
終わりを報せるように鳴りだすと
だんだんと
血圧は下がり
心音が
小さく
小さく
なって
ゆく

最期の時
魂を天へと還すように
たった一つ
大きな息を吐いて
あなたはそのまま
静かに眠った

その吐いた息にのって出た
魂が
見えやしないかと
目を凝らしてみたけれど
白い天井があるだけ
たちまち霊体になった
あなたが
笑っていやしないかと
そこら中を見回したけれど
ついに息を引き取ったあなたが
横たわっているだけ
体はまだ
温かい
あなたはもう
そこには
いない

わたしは
また一人
愛してくれた人を
なくしました

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