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スレッドNo.1671

感想と評 2/24~2/27 ご投稿分  三浦志郎  3/4

お先に失礼致します。


1 成城すそさん 「幻」 2/24

このかたも守備範囲が広そうですねえ。前作と打って変わった方向性です。
意味は取りません。ただしキーワードを拾います。

1連……夕暮れ~レンズ~砂糖
2連……朝焼け~焦燥~憂い
3連……地面~罪悪感~蒸発~後悔

これらが連結器となって詩行が構成されます。そこにあるアクロバット性は「考える」よりも「感じる」
ことを求めているようです。抽象詩に属する由縁でしょうか。ここに「幻」の感覚が潜んでいるのかも。それでも2、3連はわずかに心情的なものを滲ませています。意味は取れませんが、成城さんがこの言葉群、詩行を選んだのには、何がしかの意図・背景があった事を理解しましょう。
「あ」以降はちょっと軽めに流れて、詩全体のバランスとしては、ちょっと難しいところ? 
あと盛大な空白は何を意味するかが、謎になります。終連はわずかにタイトルを匂わすところでしょうか。佳作一歩前で。


2 喜太郎さん 「AI 」 2/24

SF詩ですね。こういう分野は此処では珍しいんです。フィリップ・K・ディックが生きていて詩を書いたら、こんな素材を取り上げそうです。今盛んに話題になります。それを反映して作られたこの詩。最大限デフォルメされ、ここまでくると「AIファシズム」と言ってもいいほどです。ファシズムは歴史的には悪の権化ですが、この詩に見るそれは、いいことずくめ。「だったらいいじゃない、以上!」で終わりそうなんですが、どっこい、そうはいかない。この詩に行間から漂ってくる“いかがわしさ”を見逃しちゃいけない!喜太郎さんの、この詩の神髄はそこにあると推測します。「人口増加抑制法」が注目され気にかかるところです。端的に言えば人間がAIに支配される危惧、警鐘を思うべきでしょう。詩行は極端を綴りますが、そういった要素があること間違いありません。そこを掬い取っている。その意味で終わり3行は暗示や皮肉を込めた警告であります。この詩はこの3行です。珍しい趣向にして興味深い、よって佳作とします。

アフターアワーズ。
文学を含む芸術万般はAIとはあんまり仲良くしたくないですねえ。ところがすでにAIが書いた小説なども取り沙汰されてます。詩も然りでしょう。逆に法曹界はアシスト用として期待しているようです。


3 エイジさん 「まぁいいよ」 2/24

オオイヌノフグリー凄い名前の割に、可憐で可愛い花。よく見かけるし、詩でも割と使われる野草でしょう。
場面は3分割されそうです。“一年前の”初連~3連。大学入学の4、5連。どちらも公園。以前何度か登場した、あの公園でしょうか。最後は「*」以降の部屋での場面。
エイジさんにしては珍しい部類に属する作品かもしれませんが、けっこう共感する部分があって、「僕らは大学へ入学した」―おそらくエイジさんは当時を振り返って書いたものでしょうが、この詩にあるのと、僕も同じ思いなんです。もうかなりの昔。「角砂糖2つ」というのも、どこか時代を感じてしまうのです。この詩を読んで思うのは、大学生といったって、今から思うと、まだ子供だったんだ、といった事です。前半部の「君」の言う「まぁいいよ」には曖昧さ、煮え切らなさ、これはやはり未熟を感じさせますし、部屋での二人のやりとり・仕草はどこかぎこちなく、場をつくろう感じが見て取れます。「愛すべき不器用さ」みたいな感覚で、この詩を把握することができます。僕の勝手なフィーリングで言うと「今から思うと」―そういった感覚を場面ごとに見せてくれているように感じたのでした。佳作半歩前で。


4 晶子さん 「燃えよ老人」 2/25

晶子さんにしてはタイトルがおもしろい。僕は「燃えよドラゴン」とか「燃えよ剣」とか思い出しますが、とにかく根性入ったフィーリング。そこを「老人」とは!ややミスマッチ気味がかえっておもしろいです。さて、中身は?
ちょっと初連が取りにくいんですよねえ。2連の「娘」を晶子さんと想定すると詩が通じやすくなる。
それで行きましょう(しかし違ってたら大問題!!) そうすると、この詩は父上に捧げられたものでしょうか。大変失礼ながら、父上が天寿を全うされた際の感慨ではないでしょうか。タイトル「燃えよ」は「根性入れろよ」ではなくして、棺が焼かれることを言っているのではないか? 泣き笑いのような位置に悲しみがあって、そこにこそ、この詩の愛惜と鎮魂があるような。初連、も少し噛み砕いてもいいような。甘め佳作を。

アフターアワーズ。
どうでもいいことなので、こちらに書きます。(終連除いて)各連のトップを1行置きにしても、ニュアンス出るかもしれないです。


5 香月さん 「アクチュアリー」 2/25 

記録によると、今回が当区間2作目です。が、ハイ、僕、この詩好きです。まだ2回目ですが、これは佳作です。貝~蟹~鳥と変化を遂げる。これは一種の進化と見てもいいでしょう。それぞれの生き物の周辺を、よく練られた詩行がしっかりと守っています。
ちゃんとロマンもストーリー性も纏っています。変身の繋ぎ目も違和感なし。自然に読めます。独特のリズム感は7・5調基調から来ていますが、古くささも違和感も感じさせないのはさすがですね。詩一篇がひとつの物語。童話としても最適です。漢字が多いんで子供が読むのは向かないけれど、読み聞かせにいいかもしれない。上記リズムの効用です。終わり2行は感動的。とにかくいい詩でした。

アフターアワーズ。
タイトルについて、アクチュアリー 「actually」(実際に)―ある予想や想像が前提としてある上で、それに反する形での事実が起こった場合だそうです。「実は、意外に、マジで」みたいにも使うとか。なんとなく頷けそうです。


6 猫目屋倫理さん 「晩餐」 2/26

これはブラックユーモアでしょうね。口調から言って、語り「私」は女性。従って「私を見つめるプリンシパル」「あなた」は男性。英訳は「大事な人」みたいな感じでしょう。これで話は通りそうです。
内容から行くと冒頭は「友人」でもいいけど、恋人のほうがしっくりしそう?まあ、現代は同性でもいいんですが……。同性と言えば、これは「ライバル、皮肉、嫉妬、憎悪」などをキーワードとして、解釈してもいいかもしれない。「足の引っ張り合い」「裏切り密告」の連。「騙しあって潰しあって」「憎悪にまみれて」―このあたりにそんなフィーリングを感じます。案外、こういうのは女性のほうが恐い!?終連1行はオチ的にして勝利宣言か?この詩に高貴なタイトルを持って来たのも利いている。こういうセンセーショナルなものも珍しいです。 恐る恐る佳作半歩前を。


7 大杉 司さん 「遠くから」 2/27

僕も時々思うのですが、一人称を全く排して書くほうがいい場合は少なからずあって、歴史的事実とか共通認識とか普遍性を出したい時、そういうことが多い気がします。もし仮にそれで行ったとすると、4連目終わりの「僕は思う」は削除でもいい気がしてます。「そんな世の中」で止めてもいいかも。シリアス感が出るかも。もちろん主観ですから、このままでも特に問題はありません。
ウクライナから、はや1年が過ぎました。本当にこの詩の通りであります。少しリクエストしたいのは、やや現実感に欠けるので、実例か何か描写が欲しい気はします。そういったリアル感を添わすとすれば「銃声だ 悲鳴だ」「悲鳴だ 助けだ 祈りだ」の連に近接させるといいでしょう。1連でもいいんです。スペースはまだあります。
傷ついて担架で運ばれる兵士。泣きながら頽れる老婆。幼子を抱きかかえて逃げ惑う若い母親。群像のことです。 佳作一歩前で。


8 朝霧綾めさん 「ご機嫌な春」 2/27

ちょうど今頃の時期でしょう。調べると今日の横浜の温度が14°Cでした。初連が微笑ましく好感が持てます。誕生日のこと、梅とメジロのことです。これからのことを考えながら、この詩を読むと、ホント、この通りでウキウキしてきますね。コートの重さ、スキップ、鼻歌、駆け出す、空を見上げる。やっぱり面白く楽しいのは6連目なんです。おばあちゃんはまずまずですが、次のおにいさんには、勘違いされないようお願いしときます(笑い)。大変失礼ながら、詩論としては、特にどうということはないんですが、このウキウキ感は貴重かもしれない。可愛らしい詩でもあります。せっかくの、この楽しさに水を差すのも、ナンなんで、半歩前で。



評のおわりに。

暖かい日もちらほら。僕の地域では3日間、風の強い日がありました。
風が冬を吹き飛ばして行ったか?あ、ひな人形かたさなきゃ……。では、また。

編集・削除(編集済: 2023年03月04日 17:46)

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