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スレッドNo.1673

2月21日(火)~ 2月23日(木) ご投稿分、評と感想です。  (青島江里)

【2月21日(火)~ 2月23日(木) ご投稿分、評と感想です】

◇都合によりお先に失礼いたします。

◎抜け殻  妻咲邦香さん

何がどうだ、そうだとか、そういうことがはっきりしるされていません。何を書こうとしているのか、はっきりとした全体の輪郭もしるされていません。読み手が読み進める手がかりとなるのは、蝶の脱皮のイメージと、実生活にある幾種類かのシーンのみ。

ですが、不思議と浮かんでくるのです!何とも言えない実世界に生きる人の虚しさに似た気持ちだとか。

これは、作者さんの技量にあるのだと思います。なんて言ったらいいのか、現実のような、そうでないような次元にピッタリとあてはまった、いい意味でグレーゾーンのような、作者さんならではの言い表せない世界の展開を感じました。ですが、心象表現は、ばっちりとリアルな言葉で表現されていて、とても印象深く。

自由は醜い
自由は冷たい
頼りないし、ひたすら痛い


伝えなければいけない
生きるために
何をすべきかを
何をすべきだったのかを


作者さんならではの技量による「あいまい」の世界の確立を感じさせる作品だと思いました。秀作を。



◎さよならの固形  森山 遼さん

タイトル、すごいです。「さよならの固形」・・・さよならが形になって残るって、何かとてつもないさみしさを感じます。かなしさなんて、さみしさなんて、できればぼんやりと、陽炎のように、ゆっくりしらないうちに消えてくれたら一番楽なのですが。

気になる点は、今回は二点です。
まずは一点目です。

君の微笑みが
とおくにあるので
私は
そこにゆく

一連目のこの距離感。一緒の場所にいて離れたところに位置しているのか。違う場所に暮らしていて、遠くの人を思うのか、はっきりしないので少し迷ってしまいました。同じ場所の少し離れたところにいるのなら、一行目に「七月の空の真下に二人」のような言葉を加えるとわかりやすくなると思いました。反対に遠くにいる人を頭の中で思っているのなら、それなりの言葉を付け加えて、修正する必要がありそうです。

二点目は主語の表現についてです。

作中に「君」と「あなた」が混在しています。どちらかに統一された方がいいと思います。あと、「私」と「わたし」の混在も同じです。特に何かこだわりや差別化を希望されていないのでしたら、統一された方がいいと思います。あとはまちがいではないのですが、「私ら」という言葉、音的に「私たち」の方が綺麗に響くと思いました。

七月のことを書いているのに、とても震えるようなひんやりとした空気を感じさせる作品。
さみしさが浮き彫りになって伝わってくる繊細な作品だと思いました。今回は佳作二歩手前で。



◎袖振り合うも他生の縁  ロンタローさん

人を好きになった記憶を振り返る。楽しければ楽しいほど、切なく、胸が苦しくなってしまうような気がします。

一連目の「運命を感じた/そう勝手に思い込んでいた」これは、振り返って初めて思う
言葉だなと思いました。

出会った時のことからお別れの時までを、過去形の「た」でそろえ、テンポのよい流れで描かれています。そのテンポのよさが、逆にさみしさを醸し出しているような気持ちにもさせられます。長々とした説明的ではない、ほどよい言葉の長さ。そして、とても正直な感情。スラスラと読めるのですが、間に入ってくる心の表現には、じわりと胸に滲んでくるものもありました。

出逢えただけでもラッキーだった
そう思うしかない
マグマのような感情も抱いた
深い縁ではなく浅い縁だった

特に最後の一行からは、とてつもないさびしい気持ちが伝わってきます。それでも、続行する連では、出会えてよかったという気持ちを表現されています。折れそうな自分の気持ちを自分で支えている健気さと一生懸命さが響いてきました。

最終連では、相手のしあわせを思う気持ちでしめられていますね。個人的に思うのですが、この最終連、それまでの連の心の表現が印象深さの連続だったので、ちょっと弱く感じました。表現的には普通の感じがするので、ここ一番の作者さんのやわらかで深い感情を込めた連にできたらいいなと思いました。今回は佳作半歩手前で。



◎ガイジン  山雀詩人さん

外国の人は、日本の人とはちがって、背が高かったり、性格がとても積極的で明るかったりしますよね。その性質を音楽に感じることもありますよね。とても楽しんで書かれていると思います。こころから詩の世界に入り込んで、その思いを元気いっぱいに表現されていると思います。

この作品で一番気になったところは、タイトルです。「ガイジン」という言葉は、差別的用語ととらえる方もいます。実際に何かのインタビューで「ガイジン」と言われると疎外されているようで悲しいと言っている報道を耳にしたこともあります。なので、こちらのタイトルは、よほど譲れないと思わない限り、変更された方がよいと思います。カタカナ表示にこだわるのであれば、作中の「ニューヨーカー」のようなところに落ち着かせるのもよいかと思います。

外国の人に思いをはせるこの作品の終盤は、自身が日本人だというところに焦点をあてています。作中で一番の肝はこの部分なのかなと。であったら、前半がかなり長くなっているので、少し整理をされて、この部分をあと少し深堀してみるのもいいかと思いました。日本の中の外国にいる日本人。念願のラップ、詩で自身の世界を紡ぐ・・・なかなか面白い表現だと思いました。今回は佳作一歩手前で。



◎想い  cofumiさん

読み進めていく途中、ものすごく大きな風を感じました。

青いワンピースに
風が舞い込みバルーンとなり
飛んでいきそうな体

青いワンピースが空色のイメージになって、より一層、景観を広げているようにも思えました。

真っ白な肌を
真っ赤に染めようとする
真夏の陽射し

こちらは、こちらで、やけどしそうなくらいの強い陽ざしを感じさせてくれました。

「小さな子供のような手で」という言葉から、貴女が、大人の女性であるということがわかりました。あとから登場するのは華奢な私。その私なのですが、貴女との関係が知りたかったです。私が貴女をその人だけのために、傘になりたいと思えるほどの理由はなぜなのか。どういう関係で繋がってくるのかと。このような気持ちや関係を明らかにすることで、全てを守りたいという気持ちに対して、読み手に感動を巻き起こすように思えたからです。

あと、肩に触れる銀の糸はどういうことを表しているのか、どういう状況なのかも知りたかったです。

作品の全体ですが、鮮やかな色を感じさせてくれる作品になっていて、とても美しかったです。今回は佳作一歩手前で。



◎らくだ  鯖詰缶太郎さん

一連目を読んで思わず、笑ってしまい、そのあと突っ込んでしまいました。
「なんで、らくだ、おるねん!」と・・・(笑)

夢なのかなと思うと、そうではなくて話は続いてゆきました。

「とりあえず/会社に電話しよう」
またまた突っ込んでしまいました。「電話すんのかぁ~い!」(笑)

会社の上司の突っ込みも笑えました。
「電車に似てたの?」
またまた突っ込んでしまいました。「そんなわけ、ないやろぉ~う!」(笑)

さらに話は進んで「私の時は鳥取砂丘だった」なんて言っている(笑)ぼけボケの上司というか、作品全体がぼけボケの世界。漫才でたとえれば、作品の登場人物がぼけ役で、読み手が突っ込み役みたいになっていますね。

意表を突く作品でした。とてもユニークですね。このままだったら、コントのネタのような感じでとらえられることも多いと思うので、社会や日頃の生活を取り巻く事項のアイロニー等を重ねてみると面白い作品になると思いました。たくさん笑わせていただきました。
ありがとうございます。



◎佇む風の先に  朔音さん

孤独について考えさせてくれる作品。孤独って何なのかな。そんなことを深く考えたこと、なかったような気がします。ただ一人ということ、周辺が、ぼっち、ぼっちと騒ぎ立てることが気になって、そういう標的にされたくなくて、不安な感情が湧いてくる。だから一人が怖くなる。で、作中で一番訴えている孤独の一番の怖さ、誰も私に気づかないという孤独。大勢の中の孤独。なるほど、気づかれない孤独っていうのが一番怖いかもしれないって思いました。そこから作者さんが表現されている孤独に対する新しい気付き。それは、「佇む」という言葉によって、急展開ではなく、自然な心の動きを映し出すことができていると思いました。

孤独の世界を草原の中の私にたとえた作品。孤独は悪くなく、楽しむことだって可能だというメッセージ。自分の風をつくろうという思い。自身の胸の内の動きを、そして希望を、素直に表現されていると思いました。


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気が付けば二月も過ぎて三月。道端に春の草花の小さいつぼみが。
春本番まであと少し。まだ数日、冬の寒さに出戻ることがあるかもしれませんね。
どうぞご自愛くださいね。

みなさま、今日も一日おつかれさまでした。

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