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スレッドNo.1678

やまない雨があるならば、やりきれないはずだ  鯖詰缶太郎

あなたの悲しみが
どしゃぶりの雨になり
この嘘だらけの街を
とめどなく
打った

雨に打たれたアスファルトは
たわんでいくというのに
なおも、人々の不誠実さが
轍を作り続ける

この街では
誰もがそうなのだが
俺の手も、黒い血の色をしている

我ながら
早い段階で
この街になじめて
うまくやれてる、と思った

俺は
犯した罪は
もちろん、人々の
教科書で培われた、うすい倫理観に訴え、
さらに
何を手に入れても満足できない欲望にも訴えかけ
罪の意味を歪曲し、

科された罰には
飼い主のつけた名前が
理解できない
猫のように
しらばっくれた

そういえば、あんたに初めて会った夜も
雨が降ってたなあ

俺は肩がぶつかったと
因縁をつけ、
その男を殴った

殴られている男の手は
黒にも、赤にも、白にもなりきれない
曖昧な色をしている

その時、
あんたはいつの間にか、
俺の後ろに立っていた

気配に気づき、
殴るのをやめた俺のコールタールを
塗りたくったように、ねばついた手を
あんたの手が包み込んだ

やわらかく、細いその手を
はねのけることなど、あまりにもたやすい

払いのけられなかったのは
あんたの体温を感じとってしまったからだ

なぜ、こんな冷たい雨の中
あんたの温度だけ、生々しいのか?

あんたの潤んだ瞳
鉄を舐めたように、ざらついた俺の双眸を見つめている
その、傷だらけの眼球は
今まで、何を見つめてきたんだ?

俺は、ふいに目をそらした
空の方を見れば、この目を見ずにすむ

悲しみも、憤りも、諦めも
その雨の粒になり、
俺の視界をぼやかす

俺の視力はまた、悪くなる
いや、これは、、、
ちがうものが見え始めているのか?

あなたの悲しみが
どしゃぶりの雨になり、
なおも、降りつづく

この街の人々は傘をささない

どしゃぶりの雨に気づかないから

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