夜景 理蝶
地にへばりつく労働の星が
涙を流すように光っている
彼らの脂汗が燃料となり
夜空のレンズを抜けて
ここまで光が届いている
彼らは自己啓発本に口答えをしながら
つまりは全てに言い訳しながら
日々の余白を騙して生きている
心に書き起こされた無数の文字は
誰にも届くことはなく深い意識の井戸へ捨てられて
忘却の海にたどり着く
深刻に刻まれた皺が笑顔にも青い影を作る
コピー用紙のように薄くなった目の奥が
思想を湛える湖であったあの時の
剃刀みたいな傷つきやすさは影もなく
ただ今は反応する窓に成り果てた
たるみ始めた腹を撫でたら
飼い犬が寄ってきて
餌欲しげに尾を振る
これと自分の何が違うのか
自問したりするが
暖房のよく効いた部屋に
一つの到達を見る時もあるのである
そんな一幕がいくつも浮かんでは消える
労働の星が光る
全てに意味のある光
目的のためただ光り
やがて遂行され消える
せっかく山道を走らせてきたというのに
僕は俯いてしまった