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スレッドNo.173

夏至  朝霧綾め

夏至はいつだろう、あの子の呟きに
いつだろうね、と答える
繊細な感性、敏感な自然観
そう思ってもらう計算も期待もない
私たちはそこまで器用ではないのだから
あの子が夏至のことを聞いたので
私も安心して、
日がどんどん長くなっていくね、と答えた

二日後、校門の前で会って一緒に帰った
小テストのこと、先輩のこと
学生らしい話題のあと
ゆったり訪れた沈黙に
あの子は口を開いて言った
「おととい、夏至の話を、したのだけれど」

学生だらけの道路は暑くてうるさくて、
え、と聞き返すと、
しっかりゆっくり、もう一度言ってくれた
「おととい、した、夏至の話」
私はあちこち走り回ってつかれていて
げし、の意味がわからなかった
それでもあの子は凛として
「家に帰って調べてみたら、その日が夏至だったの」

ようやく思い出して、なぜかうれしくて
じゃあ、あの日の太陽がいちばん高かったんだね、と目をみひらいた
めったに表情を変えないあの子も
小さく笑って、そうだね、と言った

古事記の神さまにちなんでつけられた
その子の名前が美しかった

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