光るのは 理蝶
体の中は暗闇だ
瞳から受ける世の光と
鼻腔から来る 夕餉の香りに連れそうわずかな光のみが
僕の体の浅層を微かに照らす
暗闇の中
血潮は流れ 食物はどろどろに溶け崩れてゆく
そして病は僕の体の何処かに巣くい
僕の体をいつか侵さんと
力を貯める
体の中に僕の精神だけが
光っている
物を書く精神だけが
光っている
僕を潜在的に殺そうとしている病さえも
具に照らし表さんとする
気高き精神のペンが躍動する
それが肉のある力として世界に迸り
黒いインクが紙に染みた時
一つの魂の写しが生まれる
そしてその写しは
誰かに鼻で笑われながら
僕をささやかに慰め続ける
深夜 白いノートに心を浮かべる
この孤独な試みは時に僕を蝕む
生真面目に全てを見つめようとするものだから
物事の暗い淵に時折入り込んでしまう
僕はそこでしばらく佇む
涙では解決されない心の歪みが生まれる
そんな時には
僕は夏の青空にも 赤子の微笑みにさえ
唾を吐きたくなってしまうのだ
僕は僕がひどく憎くなってやりきれなくなる
でもそれでもいい
少なくとも今は 僕は表す為に
生きてもいいと思えているのだ
さあ言葉を尽くせ 奮え神経
今日も精神のペンは躍動する
眩い眩い光の中で