藁人形辞めました 紫陽花
昔昔ある所に
不幸せな不幸せな
お母さんがおりました
お母さんはいつも
こう思ってました
この藁人形を
打っても打っても
私ちっとも幸せじゃない
憎い憎い憎い憎い
この北の大地も
回りの人間も
家族も
ちっとも私の思い通りにならない
だからこの子を打ち付けよう
小さいし 世の中を知らないし
藁人形として育てれば
私は幸せになれる様な
そんな気がする
この藁人形には
毎日毎日言い含めてるから
大丈夫
どこにも行かない
この藁人形はずっと
私のそばにある
毎日毎日お母さんは
藁人形に言います
あなたはダメな子
お母さんがいないと何もできない
出来損ないの子
あなたが出来損ないだから
私は不幸せなの
全部あなたのせい
お父さんだって
あなたの出来が悪いせいで
いつも機嫌が悪い
藁人形はしばらく
気が遠くなるほどしばらく
黙ってました
お母さんが好きだったから
いつか抱きしめてくれる
他のお人形さんみたいに
そんな夢を見ていました
でもそんな日は来ませんでした
ずっとずっと時は経って
藁人形は出てはいけない
と言われていた
家から出てしまいました
外は危険がいっぱいだったけど
愛なんて安全地帯もありました
だから
藁人形は黙って藁人形を
その時きっぱり辞めました
不幸せなお母さんがその後
どうなったか誰も知りません
多分きっと めでたしめでたし