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スレッドNo.1867

旅愁  山雀詩人

二本の棒が横たわる
山の奥へ奥へと続く

よくもまあ敷いたものだ
こんな長い鉄の棒を
こんな山の中に

もしも僕が発明家で
もしも列車を発明しても
きっと却下しただろう

線路を敷かなきゃ走れない
そんな乗り物はありえないと

でもそんな予想とは裏腹に
今や線路は津々浦々に
町から町へ
都市から都市へ
ついにはこんな山にまで延び
僕が この寂しがりやの僕が
まさかのひとり旅なんぞして
案の定寂しいだけの一夜を過ごし
案の定寂しいだけの今朝の旅立ち

それでも今まさに列車は駅を離れ
誰見送る者はあらねども
もう来ることはないであろう此処を去らんとするに
おのずから旅情は高ぶる

何だろう この不思議な気持ち
何だろう このこみあげるもの

きっとこの棒のせいだ
およそこの世の旅の形で
列車の旅ほど寂しさをかきたてられる旅立ちが
ほかにあろうか

列車を発明した人は
旅愁の発明家でもあったのだろう
寂しさを演出すべく
こんな大がかりなセットを組んで

ほら 今もつながっている
僕をさらなる愁いへと
誘うように 招くように
二本の錆びた鉄の棒が
山の奥へとつながっている
 

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