春の世 理蝶
変わっていくこと
川が訳もなくその岸を削ってゆき
岸もそれを受け入れて
川幅が広がっていくこと
変わっていくこと
人気のないの公園に手持ち無沙汰に座り込む
スーツが姿を消したこと
変わっていくこと
哀しみが鳴り止まない暮らしの中に
許されない抜け道を見つけた夜のこと
変わっていくこと
風の前に佇んだ心と川面が
同じように流れてとめどないこと
ふとその川面に桜のひとひらが降りてくること
変わっていくこと
変わっていくということ
春の夜 僕は変わっていくことに思いを馳せる
春の夜 耳をすませば冬の間固く閉じた全てが
少しずつ変わっていく音がする
変わっていくそれは考えるということ
今という場所から歩き出すために迸る血潮の行進のこと
人と人とが向かうべき幸せの為時にぶつかるということ
その衝突は美しく悲しい汗が光っていたこと
僕は忘れはしないだろう
後生忘れはしないだろう
この先何が変わっても
僕は忘れはしないだろう