営巣 妻咲邦香
見たことのない気持ちなら
いつか見つけることが出来る
見たことのある気持ちなら
一緒に連れて行ける
新しい営みを始める彼らは
人の姿をしていない
かつては例外なく人だったのに
今は翼が生えている
今は毛皮に覆われている
無数の鱗に包まれて
暗い穴の中、息を潜めてる
どのように愛を伝え合うのか
少ない言葉で
乏しい表情で
美しいものなら知っている
私たちよりも遥かに多く
教えて欲しい
若葉の囁き
嘴の祈り
鋭い牙の告白
触覚の呻き声
口にする度、目減りしていく意味の
頼り無さを嘲笑うかのように
雲が交差する
出会い頭に重なって
さらに高い場所を目指す
見ているしか出来ない私は
まだ巣の作り方も知らない
思い出せることでさえ
今にも捨てようとしている
似たような気持ち
お前は許してあげよう
許されなかった悲しさなら
知ってるつもり
これでも