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スレッドNo.1907

初恋  鯖詰缶太郎

いつか、
つかまえそこねた
蝶は、
今ごろ、
だれかの
天使になれたのだろうか?

虫取り網を持った
僕の前で、
君は
東京タワーを見て、
しぶいくせに、
なかなか、おっきいなあ、と言った

その時、
僕は、
君を、つかまえるのが
つい、遅れてしまった

ずいぶん、
ばかばかしい事を言うもんだ
と、わらってしまった

いまさら、おおきさの話なんて。
蝶は飛べるのに。

ふふ。
まだまだ、しょうじんがたりませんなあ。

君はそう言って
僕に、微笑んだ

なにか、合点はいかないが
なぜか、言い返すのも
ちがうような気がした

じゃあね。
部屋に、人を待たせてるんだ。
と、君は言って、
すきとおった羽根を
ひらひら、とさせながら
蝶は、踏切の向こうへ
飛んでいった

(すきとおった羽根。ではなかったかもしれない。その時の僕には、そう見えていたのだが、よくよく考えれば、彼女のあの時の笑った顔を思い返すと、若干、いじわるな顔だったような気もするから、すきとおる、は違っているかもしれない。ちょうど、一休さんが、この橋、わたるべからず。と、書かれた看板を見て、橋の中央をドヤ顔で、のし歩いていく、あの時の顔に似ていたような気がする。)

あのときの、虫取り網は
今、持つと、とても恥ずかしくなるくらい
ちいさく、ちゃちなものになってしまったな

僕は、
ベンチに座り
東京タワーを、眺めながら、
ああいう天使も、ありっちゃあ、ありなんだけどなあ。
と、思いながら
すこし、くたびれているネクタイをほどいて
煙草に火をつけた

編集・削除(編集済: 2023年04月15日 11:15)

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