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スレッドNo.1931

歩く  朝霧綾め

歩く
歩く
私は 歩く
家路へと向かう何の変哲もない夜道を
てくてく 歩いていく

歩く
夜をこえて 朝が来て 昼が来て
地球が一周回ってもなお
歩き続ける
永遠に歩いている
365日、
小学校の桜の木のそばを
花屋さんのほおずきの隣を歩く
冷たいみぞれが降る日は
傘をさして歩く

過去の私が歩く
歩けるようになったばかりの
小さな足で
懸命に歩く
ちょっと大きくなって
鬼ごっこをしてすりむいた足で歩く
新品のセーラー服で
スキップしながら
またある日はぼんやりとした劣等感に
うつむきながら歩く

ここを通った たくさんの人の影が歩く
疲れたサラリーマンのスーツ
おばあさんの杖
失恋した青年の革靴が
それぞれ地面の上を歩く


立ち止まる
唯一聞こえていた私の足音が
ぱたり 消えて
何も聞こえない
人々の影が動く気配を感じるだけ
暗い夜道の中
街灯が私を照らす
三日月が細く光っている

私の身体の輪郭が震え出す
人々の影が私に
ぴたり 重なった


歩く
私はまた
歩きだす

過去の私と ここを歩いた人達
それらの歩調が
私の一歩一歩に重なっているように
感じながら

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