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スレッドNo.195

雫(しずく)  妻咲邦香

光が光を追いかける
うっすらと点滅しながら
追いかける

光が光から逃げる
ゆっくりと息を吐く速さで
逃げていく

光が群れから離れ
翅を休ませている
すぐに光は群れへと戻る
誰かに呼ばれたからだろうか
光はまた何かを探し始める
それが美しいものとは限らないまま

眺めていないで、私も輪に入る
誰も逃げはしないけれど
誰も話しかけもしない
私に光はないからだ
けれど誰にも呼ばれたくない
私が光になれるまでは
此処にいて、連れ戻されたくない
このままじっと、光に混じって
一緒に空にのぼっていきたい

私は知っている
あれは星だよと
光に話しかけ、そして教える
貴方たちとは違うんだよと
よく似ているけれど
全然違うんだよと
光には私の言葉はわからないだろう
なぜなら言葉、それこそが私の光だからだ
それは私だけが発することの出来る光だからだ

光はそれでも空を目指す
私はそこへは一緒に行けない
光ではないからだ
光と同じ翅を持っていないからだ
私の中にある翅に、私自身が
まだ気付いていないからだ

 私の光
 名前を持つ光
 他の誰とも違う光

別の光が呼んでいる
私を
私の名前を
強く引き寄せられる
まだ無口で、小さな光が
私の手の甲に触れる

帰りがけ、振り返っても
私にはもうわからない
さっきまでいたあの場所に見えるのが
星なのか光なのか
彼らもきっとそうなのだろう
遠くに見えるそれが光なのか
それとも他の何かなのか
わからない
自分たちのことでさえ
星なのか光なのか
美しいのか
そうでないのか

一際大きな二つの光が
群れから離れていくけれど
見送りながらも彼らは思うのだ
きっとまたすぐに
此処に戻って来るのだろうと

やがて結んだ手をゆっくりとほどきながら
もう一つの光は言った
雫みたいだね、と

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