あたら夜 山雀詩人
電池を抜いたら時が止まった
こんなふうに簡単に
止められたらいいのに
こんな春のあたら夜は 時間を
でもダメだ 流されていく
まるでベルトコンベアのよう
僕らはその上の荷物だろうか
いつか仕分けされ 消える
せめてもの抵抗に
時計の電池を抜いた次第
ついでにスマホも電源オフ
スマホもまた一時計だから
同じ理由で
音楽オフ テレビオフ
これで消した
ぜんぶ消した
時間の経過が分かるもの
ムダな抵抗?
でも意外
本当に止まった気がするよ
ざわめきの波の海から
静寂の湖へ来たような
今こそ今を味わおう
あたら夜を惜しもう
でもダメだ まだあった
まだひとつ時計があった
こんなところに
僕の中に
ドキ ドキ ドキ
ドキ ドキ ドキ
電池はどこだ?