旅立つアルファ やまうちあつし
目が覚めてカーテンを開けると
一面の大海原だ
小高い丘や孤島すらない
たった一晩で
こんなに様変わりするとは
人生何が起こるか本当にわからない
隣の布団を見るとすでにもぬけの殻で
光る鱗が数枚落ちている
一足先に出発したというわけか
果てしない海洋を前にして
これまで思い悩んだ諸々が
きれいさっぱりどうだってよい
それでいてそれら一部始終が
無意味だったとはどうしても思えないのだ
パジャマを脱いで正体を現す
本当の名前を呼ばれるように
四角い窓枠から
ざぶん、と海へ
それから先のことは
伝説にしか書かれていない