夕日の湖畔
湖畔の欄干に肘をつき
遠くを眺める
黄砂の積もって少し萎びて見える鉄を
ふっと払って光らせる
湖にはいくつものスワンボートが浮かんでいる
スワンボートは滑稽だ
前を点に見つめている黒い目と
明る過ぎる黄色の嘴
そしてノロノロと水面を垂れるように進んでゆく
スワンの中に白い歯が見える
忙しく回る足が見える
スワンの中は盛んに活動する
しかしスワンは一向に本腰を入れることはない
ただ伝えられた力をだらしなく
湖に垂れ流して
老婦の散歩よりもずっと遅く水面をゆく
優雅とも言えなくはないが
ふと恥ずかしくなる
僕は恥ずかしくなる
あぁ目の奥が痛い
空が割れそうに見える
視界が歪んで不吉に光る
スワンボートに僕は嗤われる
大きな声で僕に言う
「何を見ている
俺はお前だ
俺に向けられる嘲笑は全てお前のものだ
いいな、お前はヘラヘラと湖畔で黄昏ているつもりだろうがお前は、俺だ
内側に心という忙しい器官を携え
忙しなく傷つき回復し瘢痕となる
そしてその過程はこの現実にさして何も与えない
ほら何も変わらない
そしてそれを悟られまいと
取り繕う 表情筋を尽くして
時に疲れ宙を見る そう一点を見つめるような黒い瞳で!
巧みに発達した語彙を口を尖らせて発射する
そう時にそれは鮮やかな嘴に見える!
いいな、俺はお前なんだ
お前は黄昏ていて
同時にお前は湖面を泳いでいるんだ
お前が馬鹿にした滑稽な白鳥のように!」
僕は湖畔を急いで去る
粘る汗が止まらない
夕日が背にきつく刺して
逆光が表情を隠す
それだけは今ありがたいと思う