感想と評 5/5~5/8 ご投稿分 三浦志郎 5/13
お先に失礼致します。
1 森山 遼さん 「詩人と永遠」 5/5
まず、初連と2連に好感が持てました。もっと言うと「ミウラ好み」といった感じです。
初連は「雨」ですが、人々の「涙」も連想できそうです。どちらかと言うと2連のほうが好きで、
「しみ」と「思い出」という両者のイマジネーション上の関連性がいいと思う。
やっぱり、この詩は3連が肝でしょう。もっと言うと、
永遠が終わった後も
屋根に喩えれば、このフレーズが見事に頂上を成し、左右、美しい傾斜を成すかの如くです。
「永遠とは何か? 永遠が終わる、とはどういった姿なのか?」―答えは出ずとも、沈思する契機を、この詩は読み手に与えているでしょう。もちろん、森山さんにとっても、この詩上での課題であるでしょう。概念や姿―「見えないものを見ようとする」詩人の性(さが)が、ここにはありそうです。そのような片鱗を、このサイズで見せた。その佳作です。
2 妻咲邦香さん 「櫃」 5/5
これは大型の箱の「ひつ」でいいんですよね?米櫃とか鎧櫃とかの……。
僕の評の場合「ああ言えば、こう言う」の部分がどうしてもあって、だいぶ以前、「此処ではちょっと」みたいなことを書いたんですが、ここ最近は「ちょっと迎合してない?」と思っていた矢先なんですが、さて、この詩、特に2連まで、(このあたりが、この人の本領でしょ。出て来た、出て来た)と思っています。ただ、「ならばその方が良い」以降、なぜか形而下的に落としちゃう。これは一体何だろうという思いがあります。正確な解釈はわかりません。が、詩のシステムのことを書いておきたいと思います。前半と後半では誰が見てもスタイル・フィーリングが違う。妻咲さんはレベル高く、このことを充分理解できるだろうと思って書いています。あ、でも最後の2行は好きですね。佳作半歩前で。
3 理蝶さん 「夕日の湖畔」 5/6
自己の中に葛藤があるのかもしれない。あるいは相克と言ってもいいでしょう。
それを浮き彫りにする、構図としての「スワン⇔お前(僕)」でしょう。当初、理蝶さんはスワンの愚鈍さを嘲笑するのですが、俄然、スワンが切り込み鋭く逆襲してくる。いわく……
俺はお前だ
キメ文句です!この詩はスワンの逆襲のほうが断然面白いのです。自分の愚鈍を逆手に取って、スワンがいちいち暴いていく感じ。この詩はこのパーツで立っていると断言してもいい。
スワンへの批判が反射板にぶつかって、そっくりそのまま返って来る。スワンの口調はちょっと脅迫のようにも取れ、迫力というか凄みがあります。それは結局、自分自身のこと。場面も交えたのは素晴らしい。これは佳作です。
4 エイジさん 「Return to Forever」 5/6
冒頭上席佳作。思考は深遠で含蓄がある。(この人、いつからこんな風になったんだろ?)―そう思わせるものがあります。ところで「永遠」という言葉はメカニカルなものではなく、多量の情緒・修辞を含んだもので、とりとめもないのですが、僕は時とは第二の神であり、神以上に絶対的なものだと思うようになったのですが、さしあたり永遠を時の別名と仮定します。この詩を読んでイメージしたことを、誤解を恐れず図示するとこんな感じ……
時――――――――――――――――――――――――――――――――――――➔永遠
↓ ↑
生まれる・出る 死ぬ・入る・還る(人間全員以下繰り返し)
人は永遠の中のピンポイントに生まれ、ピンポイントで死に永遠の時に戻っていく。まあ、上記は見流しちゃってください。 前半で目を惹くのは「肉体に縛られ~肉体からも自由に」でしょうか。
この詩は後半、次第に死生観にも及び、終わり2連はこの詩の白眉でありクライマックスを形成し終わります。特にそれら連の終わり各3行。(まいった、やられたよ!)―このつぶやきで全て理解してください。さらにひと言(こりゃあ、次が大変だ。まあ、リラックスして……)。代表作の大定番。
アフターアワーズ。
この詩はそれだけでなく、チック・コリアにも絡めてるオマケあり。名曲「LA FIESTA」あり、
「WHAT THE GAME SHALL WE PLAY TODAY?」僕、大好き。ウキウキしてくる。バラ色。
フローラ・プリンの歌声って、ホント“ユートピア”って感じ。
5 埼玉のさっちゃんさん 「選択」 5/6
前回、ちょっとチグハグな部分もあったのですが、今回はブレることなく綴られていますね。
はい、この詩のテーマにおいて「ドア」という比喩はとてもいいですね。イマジネーション的場面が浮かびやすいです。日向性があり前向きなのも魅力です。「選択する=決断する」とは、とかく難しく頭を悩ませるもの。よく言われることですが「何かを選ぶのは何かを捨てること」。こういった場面で人が一番辛いのは優柔不断に陥ったり、他者からそう思われることでしょう(評者、多々体験済)。この詩は、それを楽々とクリアーしている気がする。勢いを感じる、ということです。
ポイントになるのは、終わり3行のような気がします。これ、背中を押してますよねえ。と同時に、案外正鵠を得ているように思えてきました。ナンカ、元気が出て来た。ありがとうございます。前作と比較して佳作とします。
6 ロンタローさん 「ラジオ聖地巡礼」 5/6
エッセイ的な詩と把握しております。同時に作者と評者は、まずまず同世代と把握していますので、
評者もほぼ同じ体験をし、大部分共感ができるのです。まあ、DJになろうとは思いませんでしたが。
AMはやっぱり深夜放送でしたね。リクエストで自分の名前が読まれたりすると、それこそ有頂天。
放送を聴く為に、お飾りで勉強してたようなものです。そうですね、本格的なロックやジャズはFMでした、必死こいてカセットに録ってましたね。(おっと、脱線!)
この詩の個性になるのは、やっぱり電波送信所の件ですね。珍しい事物、珍しい動機がこの詩を面白くしているわけです。ならば、ここをもう少し叙景などして、ロマン的に膨らませて詩的純度を上げておきたい、というのが詩論的立場になります。佳作一歩前で。
アフターアワーズ。
ラジオの事はちょっと以前の「評のおわりに」で書いたのですが、基本、最低限、音楽に映像はいらないし、トーク、語りも同様です。本を読んでいるのに近いです。ということは、音楽、文芸をやる人はもっとラジオを聴いてもいいかもしれない。想像力を養えるかもしれない。
7 大杉 司さん 「最終日」 5/7
以前、エイプリルフールの詩を面白く拝読しましたが、今回はGW篇。しかも最終日。
そうですね。最終日の気持ち・群像はこういったところで、ほぼ過不足ないと思います。最終日の事実としての天気はともかく、これはややフィクション寄りの任意で構わないでしょう。まあ、この雨は最終日の気持ちを反映していると言えるでしょう。これでも特に問題ないのですが、5連は3行目とそれ以降を入れ替えても可のように思えました。そうすると、雨の憂鬱ともダイレクトに繋がりそうです。この詩の気分を表するに、最初と最後を雨で締めたのは印象的。佳作半歩前で。
8 ベルさん 「物語」 5/7
これはラブソング。
「僕の物語に君が登場」の方が普通は多い気がするんですが、これは逆。技術上の仕掛けであり、いや、それ以上に、「僕」の謙譲であり、気弱さであり、気づかいであり、優しさ、そんな風に思えてきます。「君の物語の登場人物に僕を加えてもらえませんか?」―そんなニュアンスが全詩行にわたって感じられます。初々しさとナイーブさがいいですね。2連目の動機というか、初めの心理がちょっとモヤモヤ気味かもしれないです。一目惚れなのか「こんな人を探し求めていた」のか、も少し浮き彫りにしたいところ。そうすると、他の連もさらに影響されて輝くというもの。そんな気はしますね。佳作一歩前で
9 凛さん 「風が好き」 5/8
まず技術論的な構成を見てみます。四季で4分割の4連。各連全て5行。ある程度、定型化して
抒情を嵌め込んでいく。評者の感想の書き方が即物的で皮肉っぽいと取られる可能性がありますが、実はそうではない。習作という観点において、僕はこれは時にアリだと思うのです。(こればっかじゃ困っちゃいますが)。で、中に入っている各行を見てみると、季節に応じて、よく練られ、抒情性も加味され、いい感じを醸していると思います。フリーハンドでも、こんな感じでいけば、とてもいいと思えるのです。最もいいのは、やるせない思いを込めた冬でしょうね。季節の中での「貴女」の肖像や二人はどんな時間を共にしてきたか、そんな追憶の詩です。良くなってきました。甘め佳作を。
10 まるまるさん 「白髪がなくていいねと言われて」 5/8
これはなかなか具体的な詩ですなあ。消極的に書かせてもらうと、今までそういったことに、やや無頓着だったご様子。きっかけが初連なわけですね。えーと、女性の髪のケアや技術的なことは、よくわからないので、ある程度、割愛させて頂くとして、この詩は髪を染めるという行為から、外見と同時に自分の気分も変えて行こう、そんな気がします。「BRUSH UP」という言葉が浮かびました。調べると「身なりを整える、技術・知識に磨きをかける」とあります。女性は外見を少し変えるだけで気持ちも変わる、というのは男性以上にありそうです。身近な例で「化粧や髪型を変えると気分も変わる」とはよく言われることです。この詩では髪の変化により、自分の性格や態度も少し変えてみよう、といった面が感じられます。内面にまで行っている点ですね。「一歩踏み出してみようかな」―そんなフィーリングが好感です。これは感想だけにしておきましょう。
アフターアワーズ。
こうやって読むと、何かを目指す時、女性は男性以上に、外面と内面が連動していることに気づかされます。これもひとつの向上心。評者、迂闊にも久しく忘れているものでした。
11 朝霧綾めさん 「幸せな帰り道」 5/8
いつも通っている道のようですが、今日は何かとびきり良いことがあったのでしょうか。
けっしてはしゃぐわけでなく、文中「一歩一歩」とあるように、噛みしめるような、地に足の着いた
喜びが語られています。大人の味わいです。いや、これは単純な喜びではなくて、ここにあるように「幸福」から発して、ワンランク上の境地に届きそうな気配を感じます。周辺具体物や月や星の出し方もこれでいいと思います。「帰る」およびその周辺言葉―帰り道、帰路、帰宅 帰還―などに織り込まれた詩性のようなものと、この詩の持つ感慨が上手く、美しく出会ったのを感じます。
出会わせたのは朝霧さんです。甘め佳作を。
評のおわりに。
アジサイが日々そだちはじめてうれしい。 では、また。