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スレッドNo.2102

許せないまま  江里川 丘砥

ぼくは今も
許せないままでいる
あいつの言葉も
あの人の姿も
ぼくの過去も
なにもかも

ぼくが今
しあわせじゃないからだろうか
また思い出して
怒っている

ぼくがいま
しあわせなら
笑い飛ばすのかな
思い出しもしないのかな
あいつの言葉なんて
あの人のことなんて
それきり会うこともなかったのに
どうしてあいつの言葉だけが
あの時のままのあの人が
こびりついてしまったのだろう

ぼくは今も
許せないままでいる
家を崩した台風も
山を壊した大雨も
水を干上がらせた太陽も
行く手を阻んだ雪も
みんなみんな
仕方のないことだと言ったけれど
ぼくは今も
許せないままだ

ぼくを
無碍に踏んでいった人の足
踏まれたぼくを冷笑した顔
怪我をして動けなくなったら
無理やり立たせようとした手
勇気を振り絞って生きていたら
もっと勇気を出せと言ってきた声
ぼくを蔑んで
幸せに浸っていた人を
ずっと
許せないままで
生きている

どこまでこびりついてくるのだろう
引き剥がそうとしても
血が流れるだけ
跡が残るだけ
ぼくが
しあわせになろうとするたびに
まるで傷ついたぼくが
忘れてくれるなと手を引っ張るように
動けなくなるんだ

かなしい大人になってしまったな
いつまでも許せないままなんて
悔しくて
かなしくて
情けないよな
だけど
無理に許そうとしても
もっと苦しかった

許せなくてもいいけど
しあわせになれたらいいのに
しあわせになれなくてもいいから
許さないじゃなくて

許すことは
かなしみも
苦しみも
すべて無かったことにするようで
どうしてもできない
頭では違うとわかっていても
腑に落ちない
ぼくはまだ
許すことができない

だから
無理に許さなくてもいいや
許せない気持ちを
蔑ろにしないでいよう
悔しいけれど
かなしいけれど
ぼくだけの
すこし歪で
どこかやさしげな光が
生まれている場所だから

ぼくは
もうしばらく
許せないままでいるよ

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