たからもの プラネタリウム
あるはずないと嗤われた宝を求め
少年は肩掛け鞄を手に取った
俯く母と黙り込む父に背を向けて
たった一人険しい道を歩みだした
すれ違う大人たちは一様に奇異の目を向ける
「可哀想に」
少年は幾つもの目にそう言って舌を出した
「夢を知らないなんて哀しいね」
無垢な言葉に耳を傾けるのは焚火だけで
月もただ静かに行く末を見守った
「きっと見つけ出してみせる」
あるはずないと引き止められた宝を求め
少女はリュックサックを持ち出した
泣きじゃくる弟妹の頭を撫でて
たった一人茨の道を歩みだした
すれ違う大人たちは諦めたような目を向ける
「信じて待って」
少女は幾つもの目にそう言って微笑んだ
「行ってみなければわからないわ」
力強い言葉はロウソクの火を揺らして
月は密やかに道程を照らした
「きっと何処かにあるはず」
少年少女は野を超え山を越え進み続けた
転んでも立ち上がり涙を堪えて前へ前へ
その先にあるものが何か知りたい一心で
純粋な夢のため足を止めはしなかった
傷だらけで辿り着いた少女の前に
宝物は現れなかった
あるのはただ、小さな少年の亡骸ひとつ
破れた地図のバツの真上
少女の慟哭が滲んで穴を広げた
ーー少年少女の行く末は語られず終い
御伽噺の最後は"めでたしめでたし"?