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スレッドNo.2130

言葉などいらない  朝霧綾め

言葉などいらない
散歩をしに外に出る
雨上がりの空
かすかに揺れる風見鶏

どこかの家から聞こえる
昼食をつくる音
しめったアスファルトの匂い
子供たちの遊ぶ声
空では少しずつ
晴れ間が広がっていく

水たまりに映った木々を見て思う
言葉などいらない
大切なことはみな
ずっと前から
語り尽くされていた
今更私がつけ加えることなど
もうない

無言のまま
雲がのこる青空に手をのばす
太陽で少し影になった 自分の手を
見上げるようにする

私と同じ気持ちを抱き
私と同じように
こうして空に手をのばした人だって
数えきれないほど たくさんいたのだ

私が語らずとも
ずっと昔の人々が
私よりもっと知的で美しい言葉で
書き残してくれた
だからもう十分だ
言葉などいらない

そうして家に帰った
自分が取るに足らない存在である
ということに
安心感さえ覚えた 日曜の午後

でも私は家に帰ってから
この出来事を詩にしてしまった
けれど また気が付いた
その小さな罪をも
ゆるしてくれそうな寛容さで
世界は存在しているということに

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