春眠 妻咲邦香
丈夫な檻の中、運動場の片隅で
寄り添っている、短い寿命と長い手足
内側に上手に畳んで、真白い腹でも隠すように
肘を付いて食べる癖はもうやめよう
そう思って以来、私の半分は亡骸で
毎日背負って歩いてはいるが
誰よりたくさん跪いた自信がある
予報が外れて晴れた空
枝々は一斉に手を伸ばす
きっと握手がしたいんだ
雪形も消える頃には
手のひらを出来るだけ増やして
競い合う、お互いに
それはおそらく私の咆哮でもある
暁に助けを求め、天を仰いだ
季節の変わり目に亡骸の乾いた指先が
空腹のあまり雲を掴む
さっき与えたばかりなのに
お皿は既にからっぽだ
だから空よ、あなたの力をどうか分けてと
思い出さなきゃいけない歌がある
レッサーパンダにウォンバット
ミーアキャットにアミメキリン
日の当たらない場所をわざわざ選んで
寄り添っている、亡骸のように
舐め合っている、弱さを分け合い
弔いでもするかのように
だから今は
思い出してあげなきゃいけない歌がある