路地 理蝶
チノパンの皺を血が染みる
路地を一つ外れて終えば
チノパンは血に染まり
引き金は引かれる
黒いタイは彼の首に巻かれる
冷酷な蛇となって
彼の告白を待っている
浮き上がる静脈と溶かされるのを待つ氷
全ての手筈は整っている
ただ彼は路地を間違えただけ
しかし彼は確かに路地を間違えた
街宣車がドップラーに則り歪み聞こえる
ネオンの霧がかすかにここまでやってくる
彼はかつて唾を吐いたぬるま湯に
心底戻りたいと願う
赤い目、潤んだ目、希う強く希う目
繰り返されるこのような類の事
奴等にとっては今日は明日の前昨日の続き
感情は鈍麻し適応する
大義は時に暴走し我を忘れる
そして黒いタイは依然頸動脈を触る
その力は少しずつしかし着実に強くなる
赤い目、潤んだ目、希う強く希う目
彼はただ路地を間違えた
しかし彼は確かに路地を間違えた