探していた 樺里ゆう
かつてのわたし
小中学生だった頃のわたしは
自分がよく映る鏡を
探していた
他人という鏡を
小学六年の頃
誰某くんがわたしを好きだいう噂を聞いたら
その人のことを少し意識するようになり
中学三年の頃
やたらと目が合う人がいて
彼の後ろ姿を
授業中につい見つめていた
どちらも性欲は伴わず
世間で恋と呼ばれるものだったのか
今もわからない
ただ あの頃のわたしは
自分が綺麗に映る鏡を覗き込んでは
自分という存在を
少しずつ
踏み固めていったのかもしれない
その意味で言うなら
あの頃のわたしは
他人とちゃんと向き合っていたとは言い難い
しかし今のわたしが
他人の目に映る自分なんざどうでもいいと
思えるのは
かつてのわたしの
おかげかもしれない……
なんてね