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スレッドNo.2203

柔らかくうごめく

銀行で順番待ちをしている母親の
腕の中で幼子が
飽きてしまったのか
体を弓のように逸らして暴れて
イスに頭をぶつけた

さっきまでの威嚇するような泣き声から本格的な大泣きに変わって
周りの大人達は小さな暴君の一大事に右往左往している
母親は大丈夫ですと
まわりに気を遣いながら
痛かったねぇと優しく撫でた

幼子よ
なぜ君は
そんなにも柔らかく産まれたのか
産まれる時の安全性向上のためかも知れないが
産まれてからが
危ないじゃないか
頭蓋骨に隙間までつくって
まだ立つこともできないうちに産まれてくるなんて
まるで産まれることさえできたなら
この世界が君を守ってくれるなんて
信じきってるみたいじゃないか
幼子よ
だから大人達は君の柔らかさに怯えて思わず手を差し出すのだ
恐る恐る君を抱くのだ
この世界を信じきっている
暴君のような君を

君は怒りながら泣く
なぜ私は自由に動いて全てを舐めて確かめられないのか
君は泣く
なぜイスは硬く私に当たったのか

ありとあらゆる納得いかないものと
その全てを忘れるほどの喜びの中で
君は世界と接触し
傷をつくり治しながら
君の細胞と世界がともにうごめくことで
この世界の声を聞いている
母親から渡されたおもちゃを振ることも忘れて

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