大人になるということは まるまる
友だちを傷つけてしまったことを知った時
キミも 心を傷めたかもしれない
友だちに
あの時なぜ 言えなかったのか
あの時なぜ できなかったのか
自分でやらなくちゃ いけなかった
手を取り導いてもらえる期間は
もう 終わっていたんだよ
久し振りに集まった
小学生時代のサッカーチーム
少し戸惑いながらも
直ぐにあの頃に戻れる キミたち
いつの間にか始まった
空のペットボトルを放り投げて
誰のが真っすぐ着地するか
他愛ないゲームにはじける笑顔
部屋の隅 ずい分盛り上がっていたね
会が終わって家に戻って
洗面台の鏡の前で
満足げにキミはつぶやいた
あー、楽しかった
楽しかったね また行こうねと
それで良かったのかもしれない
ごめんね
私の視線は キミには無かった
さぞ 楽しかったでしょうね
ねえ
後から参加のお友達に
気付かなかった訳じゃないよね
誘ってあげなよ
それも
聞こえてたよね
じっと見ているお友達には
全然気付いてない振りで
自分たちだけではしゃいで笑って
さぞや楽しかったでしょうね
キミは
うずくまった
鼻をすする音がかすかに聞こえ
泣いていたのかいなかったのか
体勢を変えず じっと
そして
絞り出すような小さな声で
誘えばよかった
友だちを傷つけてしまったキミも
心を傷めたかもしれない
でももう 遅いんだよ
お友達の心にキミは
穴を空けてしまったんだよ
あの時なぜ 言えなかった
あの時なぜ できなかった
こんなことがあってキミは
一歩ずつ大人に近づくのだろうか
そうだとしたら 大人になるには
一部の犠牲を伴って それが
許されてしまうものなのだろうか
キミが大人になることは
友達の傷みの上にあっても
仕方のないものなのだろうか
たぶんそうやって
私も大人になってきた
でも 大人になるとはそういうことと
まとめることは 正しいのだろうか