陳さんと日本語と私と 紫陽花
今月で私の福祉の学校の授業が終わる
私の隣には中国から勉強に来ている
20代の陳さんがいる
私は彼女の日本語が好きだ
彼女の日本語は歌うように
優しく発音される
そうっとそうっと発音される
巣から落ちた小鳥を拾い上げるように
壊れないようにそうっと
そしてなにより
単語選びと言葉遣いが丁寧だ
私の言う
ここ分からないから教えてが
陳さんが話すと
ここに大変な問題があります
教えてください
になる
彼女の教科書を読んでるような
日本語は少しかしこまっていて
よそ行きで憧れる
そんな日本語を半年聞いてきて
伊予弁も聞いてみたくなった
一緒にペットボトルのお茶を
飲みながら陳さんに
ペットボトルの蓋開かんけん
開けてもらえる?
と私は言った
陳さんはいつものように丁寧に
ペットボトルのふたあかんけん
開けてもらえる??と真似して
あかんけん??と笑っていた
私は開かんけんは
開かないからっていうことよと
説明して
それから方言のこと
愛媛は語尾にけんって付けるから
使ってみてねとおすすめした
それから二人で練習した
開かんけん 開かんけん
閉めるけん 閉めるけん
知らんけん 知らんけん
見たけん 見たけん
来たけん 来たけん
帰るけん 帰るけん
2人でけんけん言うと
また私の好きな日本語が
優しく育ったような
幸せな気持ちになった