みじかいなつ じじいじじい
よいしょよいしょ
ぼくはじめんのなかから
ひまわりママのねっこにつかまって
じめんのうえにむかった
ボクはセミのこ
みんなはボクをナッくんとよんでいる
なんねんもまえ じめんのそこでボクは
うまれた
でもボクはほんとうのママやパパをしらない どこにいるかもわからない
ボクはほんとうのママやパパは
しらないけれど
みんながボクをそだててくれた
モグラさん ミミズさん
みんなボクのおともだち
そしてねボクのママになってくれた
ひまわりママがいてくれる
ママはママのねっこでボクをそだてて
くれている ママのかおはじめんのうえだからかおをみたことないんだ
うまれてからなんねんめかのきのう
ボクはしょうがっこうをそつぎょうした
ひまわりママはおしえてくれた
セミのこはしょうがっこうをそつぎょうしたらじめんのうえにいくんだ
おとなのなかまいりなんだって
よいしょよいしょ
バッ!まぶしい!
とってもあかるいんだ まぶしいよ
なんだろう?
あれがおつきさまかあ きれいだなあ
「ナッくん がんばってのぼったね」
きいろいおかおがボクをみた
「ナッくんわたしがママ
ひまわりママよ」
「ひまわりママ!」
ボクはひまわりママのかおを
はじめてみた
ニコニコしてきいろいおかお
すごくやさしいかお
ボクはひまわりママとあえたんだ
じめんのうえにでられたんだ
ボクはそのひ ひまわりママにつかまって
かたちをかえた さなぎからはねがはえて
おとなになった
はねをパタパタさせたら
ひまわりママからはなれた
さいしょはこわかったけど
すぐにとべるようになった
それからはまいにちそらをとんだ
ひまわりママのまわりや
すこしさきのかわのほうややまに
とんでおさんぽした
チョウチョさんやてんとうむしさんが
おともだちになってくれた
まいにちがたのしいんだ
なんにちもたったあるひ
パタパタ?バタ?パタ?
あれ?きょうははねがうまくうごかない
あれ?きょうはからだがおもたい
なんだろう?とべなくなってきた
ボクはなんとかひまわりママのところへ
かえってきた
「ひまわりママ ボクへんなんだ
はねがうごかないよ そらとべないよ
びょうきかな?」
ひまわりママはボクにいった
「ナッくん びょうきじゃないよ
もうすぐねおそらにおひっこしだよって
おしらせだよ」
「おひっこし?ひまわりママとおひっこし?」
「ちがうの ナッくんだけがおひっこし
おそらにいけるのはナッくんだけなの」
「ボクひとりじゃいやだよ
ひまわりママといっしょにいたいよ」
ナッくんはなきだした
なみだいっぱいながして
いっぱいないた
「セミはねおとなになったら
おそらにおひっこしのきまりなの」
「そんなのいやだよ いっしょにいこうよ」
ナッくんはひまわりママに
くっついてないた
ひまわりママもないた
ナッくんはだんだんからだじゅうの
ちからがなくなってきた
そんななかよわくなったちいさなちからでいった
「ひまわりママ ギュッして
ボクひとりでおそらこわいよ」
ナッくんはちからがもうはいらない
ひまわりママはみどりいろのハッパのてで せいっぱいナッくんをギュッした
「ひまわりママのてあったかくて
きもちいいよ」
「ボクねむくなってきたよ
ひまわりママ ボクねむいよ
もっとつよくギュッしてよ」
ナッくんはひまわりママをみつめながら
そっとめをとじた
とじためからなみだがこぼれた
ナッくんはちいさなちいさなこえで
「ひまわりママ だいすきだよ
ママありがとう」
ナッくんはひまわりママのギュッのなかでおそらにおひっこしした
ひまわりママはナッくんをギュッして
ナッくんをずっとみつめていた
なみだをながしながら
ナッくんをギュッしつづけた
「ナッくん ママもナッくんがだいすき」
ふたりはずっといっしょだね