感想と評 6/16~6/19 ご投稿分 三浦志郎 6/24
お先に失礼致します
1 理蝶さん 「手遅れ」 6/16
試みに「つもり」を引いてみるとー
「前もって考えていること。そうしようと思っていること。意図」
「実際はそうではないが、そうなっているような気持ちになること」
―とあります。日常、割と使われやすく、それだけにわかった“つもり”になってるけど、こうして、改めて詩に置かれてみると、なかなかややこしく侮れない面がありそうです。この詩を「向こう岸」から原因的に見ると相手の誤解もありそうだし、物事とは誠に多面的。「僕」は右から入ったのに、「君」は左から受けているみたいな……。これは男女間のことのようですが、ありがちな事でしょう。前記、ややこしい部分をよく把握しコントロールされているのを感じます。そういったエッセンスを踏まえて「向こう岸」「言葉のオールが漕ぎ出す」などの隠喩はなかなか練られていて詩をいい方向性に展開させています。終連前などは気持ちの上での、ひとつの解決策にもなり得るでしょう。終連はオチ的でもあり、この詩を総合的に回収していると思えます。佳作を。
アフターアワーズ。
タイトルはちょっと違う方面という気もするんですが……。「つもり」?「向こう岸」?
判断はお任せしますが、ちょっと考えてみてくださいな。
2 ベルさん 「初恋」 6/18
「校庭のブランコ」で、この詩が小学生時分であることがわかります。こういう設定の知らせ方ってけっこう大事ですよ。いい感じ。さて「転校生」です。こういう人は気持ちがとても不安定です。
(どんなとこ?いじめられない?打ち解けられる?友だちできるかな?)全てが疑問符。こういう緊張をほぐすのは在校生の率先した声掛けです。打ち解けて扉を開けておいてやることです。
その意味で1連に見る「僕」の触れ合いは正しく優しいです。その気持ちがやがてタイトルにも繋がってゆく。ただ、そういう微笑ましい中にあって、下記の行は僕を妙に落ち着かなく哀しい気持ちにさせるのです。
その一瞬のジャンプが
永遠になった
僕はまだ生きてる
……です。もしかすると、この部分がこの詩の肝かもしれない。2連では此処が現在で前連が遠い回想部分であることがわかります。どのくらい経ったかは明らかにされませんが、その書きぶりからすると、だいぶ月日が経った「今」を思わせます。
上記抜き書きが何を意味するか、僕が何を連想したかは敢えて書きません。ですが、転校生という境遇も含めて、今に蘇り、今も共に歩む過去であるようです。佳作を。
3 エイジさん 「永遠のこだま」 6/19
たまたまの偶然を結論的に書くと、これ、歌にもなりそうな気がしてます。多少分析的になりますが、
まず初連はイントロにして序論にして総論的。以下、サンプルの連です。蜘蛛・レコード音楽・書物。
(蜘蛛の登場がおもしろいですね)いつでも、どこでも、何にでも“常在”する、の謂いでしょうか。
さて、それはなに?書かれていません。書かなくていいです。書けないです。詩はそれを感じさせるだけで充分な存在と僕は思っています。
5連からは以前の定型的を離れて、詩的結論を得る為の態勢を取っています。6連が結論、それを踏まえて7連で、願いや祈りにまで至る。構成の妙と言っていいでしょう。これらの部分を読むと「時間・空間」は下部概念として把握されています。すると、もっと形而上にある何か。
ところで経済用語に「見えざる手」がありますが、経済学を離れて、この言葉を詩的に把握しイメージを広げていくと、この詩のタイトルにも近づけそうな気もしてきました。「見えざる手がもたらす永遠のこだま」―なんちゃって……!この世界に大きく投網するような把握の仕方。佳作です。
4 晶子さん 「私」 6/19
シンプルに読めますが、不思議な詩です。難しい言葉はひとつもありませんが、この詩の真意を含めて指向するところのものが難しいのです。この詩は後半すなわち「私は今」から最後までをよく検証する要ありと認めます。「私」とは「晶子さん、Aさん、Bさん」ではなく客体化された「私」。
人間全てを大括りに集積して出て来た総体としての「私」―僕の場合、そうとしか捉えられないのです。生死のラインに人を等しくおけば、これすなわちみんな「私」です。私事になりますが、「あなたの立っている~囁気かけるのです」のくだり、今僕が関わっている自作と底流で繋がっているのです!個人的に非常に共感できるのです。さて、終わり3行もすこぶる難しい。ただ、上記「総体としての私」を援用すれば、辛うじて解釈できるか?
エイジさんと同様、これは実は壮大な詩ではないか、そんな予感があります。そういったものが「私」というパーソナルな語感の中に埋蔵されているのではないか?地下の宝物のようにです。佳作です。
評のおわりに。
6月もあと1週を残すのみ。今年の半分が終わることになります。この早さ!
紫陽花が枯れてゆくのを見るのが恐怖の日々。 では、また。