忘れない 江里川 丘砥
ぼくが消えて
この世から消えて
跡形もなくなったら
なにもかも
終わりだなんて
ぜったいにうそだよ
きみが
忘れないと
言ってくれたから
ぼくらの
時間を
忘れないと
言ってくれたから
かなしみも
よろこびも
残っていくよ
かなしみはいつか
だれかを救い
よろこびもいつか
だれかを拾う
そうやって巡る世界で
誰か一人が消えて
抜け落ちるだなんて
ぜったいにうそだ
ぼくが今
立っているのは
だれかのかなしみでできた
結晶の切っ先
随分前によろこんだだれかの
手のひらから打ち上げられた
花火の真上
そこにぼくが
新たな結晶をつなげ
次の花火を打ち上げる
そうやって
ぼくらは
つづいていくんだ
この世から消えたら
跡形もなくなって
なにもかも終わりだなんて
ぜったいにうそだよ
きみのことを
ぼくが
忘れないから