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スレッドNo.234

感想と評② 7/1~7/4 ご投稿分  三浦志郎  7/8

7 朝霧綾めさん 「猛暑日」  7/3

この詩の発想は実におもしろい(=興味深い)です。まず初連。熱気を地球のパワーと感じて嬉しがる、これだけでも凄いんですが、2連。この猛暑は地球のお産のことだと言う。ここが冒頭感想の核になります。とにかくユニークのひと言です。いっぽうで熱中症になるくだり、ここはちょっと展開を急ぎ過ぎた気味がありそうです。2連を受けて、もうひと山、もうひと連あっていいようです。
あと「雨がぽつぽつ」のくだりは1行空けて始めたい。佳作一歩前で。

ぼくもここに立っていなきゃ

そんなひとり言が虚ろに響いた
ぼくの好きな太陽が
視界の中で
だんだんと閉じられていく
ゆらゆらと ぼやける路上
せみが鳴いている 気がした
世界が小さくなって
あとは忘れた

とたん~~


みたいな。参考までを。



8 エイジさん 「旅人かへらず」  7/4

この詩を読んで、(エイジさんというかたは、今を含めて考えると、その生き方は波乱万丈であるなあ)―そんな思いがあります。さしあたり、今、この時はこの詩世界に特化して考えたいと思います。
1週間くらいアメリカに行っただけでも想い出深いのに、3回目、1年半も滞在すれば、思いはひとしおで、生き方にも影響を与えるものであったでしょう。ここに書かれていることはほんの一部のような気がします。この詩はやっぱり終連が深くポイントになるでしょう。前半3行は実感を伴って共感することができます。僕もこんな風に思ったことがありました。今もその残余はあります。僕の場合は国内ですが。西脇引用の二つの部分を解釈したいと思います。こんな風に……。

「生身の自分はこうして此処にいるが、もう一人の自分は幻影の人となって、今もかの地にいる。
いつまでも居残っている。その旅人は今も幻影となって帰ることがない。 旅人かへらず」

甘め佳作を。

アフターアワーズ。
西脇順三郎の引用、ありがとうございます。僕を詩の世界に誘った(あるいは連れ込んだのは)
全くもって、この人でありました。


9 まるまるさん 「菜箸の威信」  7/4

日常的・現実的作品ですが、おもしろいところを掬い取っています。僕にとっては思いもよらないアイテム登場なので、急いで台所に行き見てみました。先がギザギザし上半分に緑の細かい縞模様付き。材質は木でした。そういえば、子どもの頃、紐で繋がったのを見て不思議に思ったことがありました。ちなみに菜箸で塩をつまもうとしても上手くいきませんでした。家内に聞いても「殆どしない」とのことでした。それはともかく、この詩は実践に即しているため、強さと説得力があります。
おそらくこういうことだと思います。
「食用箸で逆を使うのは、臨時に取り分ける時くらいで、使用頻度は10%にも満たないでしょう。そこへいくと、菜箸は両端使える。昔ながらの飾り無しならなおのこと。躊躇がない。シンプルさがもたらす効用のようなもの」
そんな風に感じています。「シンプル イズ ベスト」とは僕は必ずしも思わないんだけど、これは
、そんな例の気がします。この詩の華は「端から端まで」以降、、もっと言うと、終連です。
これは実用がもたらした佳作。

アフターアワーズ。
昔のCMに「お箸の国の人だもの」というのがありました(確か、三田佳子だったと思う)。
そのお箸の国が見出し育んだ”優れ道具“でしょう。そこに”箸族“の威信、矜持、プライドがあるかのようです。タイトル秀逸です。特に「威信」。この言葉、血沸き肉踊ります。「威信」だけで、僕の中では、すでにして半分、佳作は取れていたのです。「菜箸を詩箸ひとつまみ、掬い取り」



10 ピロットさん 「葡萄に栗鼠」 7/4

ピロットさんの詩を読むことは評者も勉強することに等しい。今まで数々の作品において、そうして来ました。さて、今回はタイトルにもある通り、伊達家菩提寺・瑞巌寺御成玄関の欄間に彫られた「葡萄と栗鼠」です。画像で見ると細長いスペースに施され、ちょっと目立たない感じですが、それこそが好事家(こうずか)的で、あの島崎藤村でさえ感動し「若菜集」に収めたとか。左甚五郎も諸説あるだけに興味深く登場させています。最後の「*」以降にオリジナリティを濃厚に感じました。
この彫り物は考えようによっては妙な取り合わせの、珍しい構図なのですが、このあたりの描写や感受性を上手く働かせて個性的な解釈を達成しています、このあたりがピロット流。すなわち……、
「潜ませている・待っている」から「しっかりと掴む」へ。このことは「静から動へ・受動から能動へ」
とも解釈できるのです。そしてその事は、眺めていたピロットさん自身の心の動きや願いを投影したものとも解釈できるのでした。それが、この「きっと」の置き方。佳作を。

アフターアワーズ。
この稿を書いている時点で皆伝昇格が決定しています。詩を長い道のりとするならば、これはひとつの通過点であります。通過祝福佳作を。そして、これからの「KEEP ON ~ING」を。



11 もりた りのさん 「旅人の音楽」  7/4

最近、物語的な詩が好きな評者としては、大変興味深く読んだのです。寓話的、ファンタジー的手法で読ませますね。対象が僕にとっても関心事であることも言えます。この寓話が提示するエッセンスを考えたいと思います。王は人知れず旅人の音楽を聴きに来て感涙するほどに感動しています。ところが、あくる日の、掌を返すような過酷な仕打ちです。ここで話題を変えます。先日大河ドラマで源頼朝の乳母が頼朝に向かって、こう言います。「立場はひとを変えますね」―この詩のこの場面は、まさにそれであるという気がします。一私人の感性VS国を統べる王としての体面や立場。もうひとつ考えられるのは、この音楽家が国や王を称える曲、勇気や好戦を説く曲を奏でたとしたらどうでしょう。彼はこの国でしかるべき地位を得たかもしれません。この詩から僕が感知したことは以上です。前者は人が生まれついて普遍的・後天的に持つものかもしれず、後者を含め両者は戦前、戦中、日本でもあったことです。非常に大事なことを含蓄豊かに書かれました。一点だけ言うと―個人的傾向になりますが―タイトルは王様寄りにしても、おもしろいかもしれない。もちろん、これでもいいのですが。 すいませんが、僕はまだ、もりたさんを読んで日が浅いので、佳作一歩前でお願いします。

アフターアワーズ。
急に思い立ったので追加します。音楽のある人、音楽のない人、それら両者を想像するのも興味深いところです。


評のおわりに。

今、安陪元総理が銃撃され重体というニュースでもちきりです。安陪元総理の評価は分かれますが、僕の学校の先輩で二年間ほど一緒でしたが、もちろん面識はありません。ですが、校内ですれ違ったことがあったかもしれません。民主主義を暴力で揺さぶろうとするのは、どんな理由であれ許されることではありません。元総理の回復を祈っております。では、また。

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