幸せだから 朝霧綾め
幸せだから
大声で笑うことはせずに
心の中で 静かに微笑んでいます
大切な身内を
亡くしてしまったばかりの人が
隣にいるかもしれませんから
幸せだから
歌うことはせずに
小鳥の鳴き声を聞いて 楽しんでいます
声も枯れるほど
泣いて悲しみぬいた人が
前を歩いているのかもしれませんから
眩しいものを見上げるとき
人は傷つくのではないでしょうか
その痛みは嫉妬になったり
憎しみになったり
傷を広げてしまうときさえ
あるように思うのです
だから私は
笑いもしませんし 歌いもしません
愛想が悪いように思われるでしょう?
でも 幸福感で鋭敏になった
やさしさや善の感覚が
私にそうすることを求めるのです