17 山雀詩人
傘をさすと安心する
シェルターに隠れているような
外界から守られているような
そんな気になる
だからたまに知らない誰か
いや本当は知ってるけれど
顔も名前も知ってるけれど
でもやっぱり知らない誰か
つまりいわゆる同級生に
通学路で話しかけられても
傘があればそんなに怖くない
だって守ってくれるから
傘というシェルターが
私を隠してくれるから
生まれる前の小鳥のヒナも
きっとこんな気持ちだろうか
かたい殻に守られて
安心して眠っているのだろうか
そうだ
傘はまるで卵の殻だ
そして私はおびえるヒナ
もう殻を破ってしまって
もう生まれ出てしまって
でもまだ殻を懐かしんで
今朝も雨
通学路はいっぱいだ
〝誰か〟たちでいっぱいだ
似たような顔をして
似たようなことをしゃべって
私は殻の中を進む
傘を傾け私を隠す
あ 前にいるのはカナちゃんだ
クラス一の人気女子
でも私には知らない誰か
さらに傘を傾ける
お願い
誰も私に気がつかないで
誰も私を振りむかないで
そして雨よ やまないで
どうかずっとやまないで
だって私はヒナ
生まれたてのヒナ
怖くてこわくて泣いている
17歳のヒナ