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スレッドNo.2349

食む  妻咲邦香

小さな苗を植えた
目立たぬ場所に植えた
私に何をもたらすだろう
今はまだ頼りない宇宙だ

仕組みを解き明かす度に
誰も孤独の虜になるようだ
知らずに生きていられたら
万人に愛されただろうか

夕立が遠い空に産声を上げて
悲しいだけでは泣かない
嬉しいだけでも笑わない
外はじきに暗闇だから
お喋りしないで帰る

交差した
何でもない街角だった
何でもない方法で
私は草を食んでいた
すれ違う人は何かを探してるようだった

あるものは無い
あったものはなくなる
そして生命の海で泳ぐ
消えそうな筆跡をなぞるように
悲劇でもいい
傍観者でいたくはない
人は本気ですれ違う時
何も持ってはいない

胃袋の中で生きる
たとえ食べられたとしても
生きてやる、そうしてやるよと
譫言みたいに繰り返す
栄養にされてまでも、誰かのその体内で

長過ぎた季節が終わる
時はまた急ぎ始める
小さな苗を植えた
届く風はどれもやわらかで
やがて私は怯えるだろう
自分自身の見えずにいた恐ろしさに

道は何処かにあった
私の歩けない道だ
外はじきに暗くなるから
仲良しと並んで帰る
もう笑ってくれなくてもいいんだよと
教えてあげながら

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