正解をください 紫陽花
猫が来るようになった
ちょうど父の49日あたりから
猫が台所の大きな窓の下に
音もなくやってきて座っている
私をじっと見ている
後ろに視線を感じると
猫がいる
その猫は灰色で
その大きな瞳も灰色で
でも その目だけは
私を見ているようで見ていない
まるで そう
まるで鏡を見ているような感覚
私の後ろにいる誰かを
見ているかのような
その猫の目には私の姿なんて
映っていなかった
その猫の目には
父がいた
父がいなくなって
私には正解を求める存在が
いなくなった
父はいつも私に
どちらの色が好きか?
という簡単な問いから始まり
どんな仕事をしたいか?なんて
難しい問いまでをしてきた
いつも私に父の持っている
この世で一番正しい正解を
答えさせようとしてきた
私を静かに見つめる猫の目に
私はまた何か問われているような
試されているような
私は今日も正解を導き出そうと
猫の前で唇を噛みしめている