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スレッドNo.2371

いい夢  朝霧綾め

いい夢をみた
けれど どんな夢なのだっけ
それが思い出せない
いい夢をみたということだけ覚えている

目が覚めて
顔を洗い
服に着替えて
靴を履く
時間がない朝にばたばたと
足音を立てて
朝ごはんを食べて
歯を磨き
靴を履いたら
家を出る
現実の世界で一歩私が歩くたび
夢の世界からは一歩遠ざかっていく

どんな夢なのだっけ
何かの拍子に思い出せるかな
電車に揺られながら考える
けれど思い出せない
覚えているのは
ただいい夢をみたということだけ

目覚めたときのぼんやりとした心地よさが
思案に変わる
さらに思い出せないかすかにいらだちに
変わってしまいそうなのを
そっと押しとどめ
思い出そうとすることをあきらめる
思考は現実へ
今日やるべきたくさんのことを
数え上げながら
窓の外の高層ビルに視線を向ける

電車を降りてまた歩き出す
それでも
いい夢をみた
そのことだけは覚えている

帰り道 同じ駅を通って家へと向かう
夢から遠ざかっていった朝
夢へと近づいていく夕方

家に帰る頃には
いい夢をみたということさえ
もう忘れている

思い出すより早く
また別の夢をみる
もっといい夢をみるかもしれない
そうして忘れてしまう

遠ざかっては近づいていく
ぼんやりとした心地よさを
胸に残して

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